同族経営色が強い会社のIPOは、山のようにあります。

しかし、同族経営色が強い会社が上場を目指す場合、IPO審査において、申請会社の利益よりも同族役職員の利益を優先するような傾向にないかどうかを審査されることになるため、注意が必要になります。

ここでは、取締役の配偶者が役職員、または株主として関与している上場達成会社を調べてみました。

上場準備における配偶者は、どんな所に出てくるのかは、↓でご参考ください。

上場準備における「親族」「血族」「姻族」「近親者」「同族」について

取締役の配偶者が役職員である場合のメリットと注意点

夫婦で起業する、またはスタートアップしたばかりの会社は、順風満帆な採用活動が出来ないため、妻が旦那を手伝うというケースは多々あります。

しかしIPOを目指す会社の場合、次のような注意点が必要になります。

同族役職員の利益を優先するような傾向にないかどうか

世の中には、オーナー経営者家族の税金対策として、配偶者を役職員として勤務させている会社が存在しているのが事実です。

上場を目指す会社には、全く相応しくありません。

そう思わせないように、勤務実態や人事面、報酬面の公平性を説明できる必要があります。

取締役の配偶者を役職員にすると、次のようなメリットがあります

ハラスメントの防止役として

企業のコンプライアンス遵守において、業種業界問わず、パワハラやセクハラを中心としたハラスメント防止は重要な位置づけにあります。

実は、ハラスメントを行う事例として、最も多いと言われているのが、社長を中心とする取締役です。

「株式会社龍角散」「電気興業株式会社」「株式会社ストライプインターナショナル」・・・

社長が社員に対し、セクハラやパワハラを行ったという疑いがある会社が続出しています。

関連記事をリンクしておきます。

  • 株式会社龍角散に関する新聞記事は、こちら
  • 電気興業株式会社に関する新聞記事は、こちら
  • 株式会社ストライプインターナショナルに関する新聞記事は、こちら

もし、取締役の配偶者が役職員になっていれば、取締役が女性社員に対しセクハラするなんて、考えられませんね。

また、コーポレートガバナンス・コードにおきましても、女性の管理職を奨励されています。

取締役の配偶者の関与事例

2019年以降に上場達成した会社の内、取締役の配偶者が役職員、または株主として関与している会社を調べてみました。

EDINETの「配偶者」で文字検索をし、その内容について確認し、その結果を表1にまとめました。正確性については保証できません。

表1 配偶者が役職員または株主として関与している会社例

社名 類型
ブロードエンタープライズ 1
アクシージア 1
コラントッテ 2
Kids Smile Holdings 3
ジーネクスト 4
フィーチャ 4
サクシード 5
i-plug 5
Enjin 5
ベビーカレンダー 5
ニューラルポケット 5
ドラフト 5
リグア 6
BCC 7
木村工機 7
香陵住販 7
ログリー 7
オプティマスグループ 7
要興業 7
幸和製作所 7
ポエック 7
グリーンズ 7
タカヨシ 7
T.S.I 7
ジィ・シィ企画 7
ROBOT PAYMENT 7
コアコンセプト・テクノロジー 7
メイホーホールディングス 7
室町ケミカル 7
東和ハイシステム 7
日通システム 7
リバーホールディングス 7
表1の見方
  • 類型1:取締役の配偶者が取締役に就任している会社(取締役の配偶者は、株式等を保有していない)
  • 類型2:取締役の配偶者が取締役に就任している会社(取締役の配偶者は、株式を保有している)
  • 類型3:取締役の配偶者が取締役に就任している会社(取締役の配偶者は、ストックオプションを保有している)
  • 類型4:取締役の配偶者が従業員になっている会社(取締役の配偶者は、株式を保有している)
  • 類型5:取締役の配偶者が従業員になっている会社(取締役の配偶者は、ストックオプションを保有している)
  • 類型6:取締役の配偶者が従業員になっている会社(取締役の配偶者は、株式とストックオプションを保有している)
  • 類型7:取締役の配偶者が役職員になっていない会社(取締役の配偶者は、株式を保有している)
類型 配偶者が取締役 配偶者が従業員 配偶者が株主 配偶者にSO付与
1
2
3
4
5
6
7

この調査方法であれば、「配偶者が従業員であり、株主ではない」場合は、検索できません。

取締役の配偶者へストックオプションを割り当てる事例

取締役の配偶者へストックオプションを割り当てる場合、IPO審査等で公平性を説明できる必要があります。表1の類型3,5、6の8社について調べてみました。

表2 取締役の配偶者へのストックオプションを割当数の考察

社名 配偶者へのSO付与妥当性
Kids Smile Holdings 配偶者は、会社をほぼ創業時に入社したため、多数付与していても妥当性を説明可能
サクシード ストックオプションの割当数が他従業員と同数
i-plug ストックオプションの割当数が他従業員と同数
Enjin ストックオプションの割当数が他従業員と同数
ベビーカレンダー ストックオプションの割当数が他従業員と同数
ニューラルポケット ストックオプションの割当数が他従業員と同数
ドラフト ストックオプションの割当数が他従業員と同数
リグア ストックオプションの割当数が他従業員より少数

表2にあった8社は、取締役の配偶者へ割当てたストックオプションの個数が公正性を疑うような事例はありませんでした。

例外の事例

しかし、極めて稀なケースがあります。

役職員ではない配偶者にストックオプション(正確には、新株予約権)を付与した事例です。

↓で紹介しています。

役職員ではない社長配偶者へストックオプションを割り当てた事例【IPO事例】

まとめ

ここでは配偶者が役職員として勤務している会社について、取り上げてみました。

10年以上前までは、配偶者が役職員として働いている会社は、いわゆる「三ちゃん企業」の色が濃くなり、まず「上場を目指す会社として、相応しいのか?」という疑念が出ていました。

しかし近年のIPOでの評価は、その潮目が変わっていると思います。

ちなみにブログの中の人が社外取締役になっている会社は、社長の奥様がCFOの会社です。そのCFOは、女性社員のリーダー的な立場になっており、気軽に相談出来やすいような雰囲気を作っています。そのような会社は、男性社員が女性社員に対しセクハラ問題を起こすリスクが低いと言えると思います。

また、亭主であるオーナー社長に対しては、意見や忠告をガミガミ言っていまして、ガバナンスの観点からも文句をつけようがありません。

個人的には、24時間、妻と一緒にいることは、無理です。

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