会社の成長のためにM&Aや事業売却の重要性が高まっています。

しかし一方で、IPOを実現するためには、上場直前にM&Aや事業売却をすることは、難しいという側面があります。

ここでは、上場直前のM&Aや事業売却について説明させていただきます。

上場直前のM&Aが困難な理由

上場を目指す会社のレベルになると、証券会社や銀行などの金融機関、税理士事務所や会計事務所、経営コンサルなどと付き合う幅が広くなり、そのような会社から色々な提案が来るようになりますが、その中のひとつに、M&Aがあります。

特に主幹事証券会社以外の証券会社が、M&Aを提案するケースが度々ありますが、その提案を主幹事証券会社に相談すると、”早期のIPOをとるか”または”M&Aをとるか”という二者択一で選択を迫るケースがあります。

つまり株式上場をするためには、M&Aが障害になる場合があるということになります。

それは次のようなことが主な理由です。

内部管理体制能力の確認を十分に出来ない

原則、直前期と申請期は、上場申請企業グループが行っている内部管理体制の運用期間にあたる期間になります。

上場を達成するためには、連結決算体制、決算短信等の適時開示体制、規程の遵守状況などを一年以上に渡って作成・運用状況を主幹事証券会社が確認したうえで、主幹事証券会社が東証へ推薦するというプロセスが必要になります。

主幹事証券会社内部にも公開引受部門が審査部門に推薦するというプロセスが存在します。

それぞれの部門の担当者や責任者が「買収された会社の管理体制をあまり見ていませんが、大丈夫でぇす!」と言えるレベルになければいけません。

特に連結財務諸表を作成した経験のない会社、つまり単体でしか財務諸表を作成したことが無い会社、また子会社管理をした実績のない会社が上場直前にM&Aをした場合、主幹事証券会社は「M&Aをとるか、または株式上場をとるか」の選択を迫る場合があります。

発行価格の設定が困難になる

ブックビルディングで発行価格を設定することになりますが、その発行価格を設定するためには、直前々期~直前期~申請期の業績推移が最重要指標となることは言うまでもありません。

申請期の売上や利益が直前期と比較して急上昇しても、IPO直前のM&Aの影響が大きい場合、連結財務諸表が主幹事証券会社にとって企業業績の成長性を評価する判断材料として利用しづらくなる場合があります。

ベンチャー企業のM&Aに対する抵抗感がIPO業界に存在する

これは、年々、重要性が低くなっていますが、IPO業界において、M&Aという言葉は抵抗感が大きな言葉でした(ひょっとすれば「抵抗感が大きな言葉でした。」という過去形ではなく、「抵抗感が大きな言葉です。」という現在形かもしれません)。

それはライブドアショックという証券界を揺るがす事件が過去にありまして、そのライブドアがM&Aをムチャクチャやりまくっていたという事も一つの要因に存在します。

例えば、上場審査において、IPO時のファイナンスによって獲得した資金の使途をM&Aに使うと回答することは御法度でした(しかし、昨今は徐々に変わってきているようです)。

上場直前にM&A出来る条件

上に挙げた理由で直前期以降にM&Aすることは、ハードルが高くなります。

しかし会社の競争力を高めるために必要なM&Aであれば、”IPOを延期してもM&Aをとるか、またはM&Aを延期してIPOをとるか”の選択を迫られるのではなく、”M&AもIPOもどちらもとる”べきだと思います。GAFAMを始めとする米国大手企業は、M&Aを有効に使ってきました。しかし、どの会社でも出来ることではありません。

そのような事をふまえ、次にブログの中の人が考える”IPOもM&Aも両取り出来る条件”を述べさせていただきます。

M&Aの必然性をアピールできるようにする

直前期や申請期にM&Aすると、特に証券会社の担当者は、Ⅰの部の内容、月次決算や予実管理などにおいて、緊急な確認作業が増えることになります。

証券会社や監査法人の担当者は、心の中で「メチャクチャ忙しいタイミングで余計なことをやるな!」と心の中で叫んでいるに違いません。

そこで、証券会社や監査法人担当者から前向きな協力を得ることが、まず重要だと思います。

まずは、なぜ今、M&Aを行わなければいけないのかをしっかりと説明出来る必要があります。

既存事業とのシナジーが低く、単に連結の売上高を上げるだけを目的としたようなM&Aであれば、間違いなくネガティブな評価を受けると思います。

M&Aする会社の知的財産活用による事業シナジーの創出、または目標とする事業形態の具現化の早期化等(いわゆる「掛け算型M&A」)であれば、ポジティブになる可能性があります。

内部管理の構築能力が高水準である

M&Aをして子会社が現れると、色々な業務に影響を及ぼします。

連結決算、子会社管理、内部監査、予算管理。。。

「上場審査対応で忙しいから、これらの体制構築は後回し」ということは、あり得ません。

自社の管理体制構築だけで、いっぱいいっぱいの状態の会社であれば、即対応なんて夢物語です。

近年、上場達成した会社の内部管理体制水準と比較してみても、相当、高水準であるという評価を受けなければ、上場直前でのM&Aは難しいと考えます。

M&Aは、引受審査開始前までに

IPOまでに至る審査は2回あり、最初の審査が主幹事証券会社の審査部門が行う引受審査になります。

この引受審査に入るためには、主幹事証券会社の公開引受部門が自社の審査部門へ推薦することになります。

その引受審査または上場審査の途中でのM&Aは、相当ハードルが高いと思われます。

影響が小さいこと

M&Aによって、連結財務諸表の内容が大きく変化してしまうような大規模なM&Aの場合は、極めてネガティブです。

また被買収企業が展開する事業によって、新たな非財務情報(特にリスク情報)が発生するようなM&Aはネガティブになります。

また、被買収企業が多店舗展開している会社や海外展開している会社、大勢の社員を雇用している会社、多額の資産を抱えている会社を直前期や申請期にM&Aすることは、極めて困難です。

開示は丁寧に行う

買収した目的についてⅠの部に記載する必要があると思います。

上場申請期に企業買収、事業売却を行ったIPO事例

申請期に企業買収または事業売却することは、ハードルが高いですが、それを実行した会社が上場を達成した事例があります。

「どこの会社?」「どのようなM&Aなの?」については↓で紹介しています。

上場申請期に企業買収、事業売却を行ったIPO事例【IPO事例-36】

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