日本国内では、中小企業の事業承継が社会問題化しています。

そこで政府は、事業承継の円滑化を目的とした補助金制度や税制優遇措置を進めています。

IPOを目指す会社の経営者が、これらの措置を完全無視するのは非常にもったいない感じがします。

カオナビのIPO

2019年3月15日に上場をした株式会社カオナビの社長と副社長は、生前贈与を目的として、無償で直前々期末に配偶者へ一部の保有株式を無償で譲渡しています。

上場前に譲渡をする方が、税制上のメリットを享受できると考えたことは間違いないと思います。

IPOの準備段階で自社株式を生前贈与したのは、カオナビの他に次の2社が事例としてあります。

  • リバーホールディングス株式会社
  • 株式会社オーケーエム

相続時精算課税制度

このケースには該当しませんが、IPOを目指す会社の経営者が最も多く採用しそうな、非上場株式の贈与に関する制度として、「相続時精算課税制度」という制度があります。

この制度は、60歳以上の親または祖父母から20歳以上の子ども等の推定相続人または孫(推定相続人に限らない)に対する贈与について適用できる制度です。この制度を使った贈与は、贈与財産累計2,500万円までは贈与税がゼロになるものです。

上場準備時の生前贈与

経営者が保有株式を生前贈与をする際は、株価算定が必要になります。

株価算定は、顧問税理士など第三者からの評価をうけることが原則になります。

しかし生前贈与だけを目的とした株価算定のために、会社の経費を使うという行為は、上場審査の観点では、ネガティブ材料として評価される可能性があることを留意しましょう。

カオナビの場合は、生前贈与の直前にベンチャーキャピタルの間で株式の売買をしており、生前贈与目的のためだけに株価算定をしていないと思料します。