Ⅰの部の中に「事業の内容」という項目があります。

その項目の記載ルールとして、以下のような内容が存在します。

開示府令 様式第二号(記載上の注意)(27)c

提出会社が有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当する場合には、その旨及びその内容を具体的に記載すること。

以下では「特定上場会社」について簡単に紹介します。

「特定上場会社等」とは

「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」第49条第2項では、以下のような定義がされています。

「直近の有価証券報告書に含まれる最近事業年度の損益計算書において、関係会社に対する売上高が売上高の総額の80/100以上である上場会社等」

一般的には、純粋持株会社が該当しそうです。

「特定上場会社等」という用語が出てきた時の金融庁の考え方(以下「金融庁の考え方」といいます)は、こちらになります。

「特定上場会社等」に関する記載事例

特定上場会社等に該当する会社がIPOを達成した事例は、数多くあります。

事例としては、「事業の内容」の冒頭部に記載している事例が多くありましたので、冒頭部に記載した事例を2例紹介します。

株式会社GENDA

当社グループは、純粋持株会社として経営指導等の経営管理を行う当社(株式会社GENDA)及び株式会社GENDA GiGO Entertainmentを中心とした連結子会社6社、及び持分法適用関連会社2社(2023年5月末時点)により構成されております。なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

エキサイトホールディングス株式会社

当社グループは、当社及び連結子会社2社(エキサイト㈱及びiXIT㈱)によって構成されております。当社は持株会社として、グループ戦略の策定、グループ経営のモニタリング機能を果たすとともに、グループ会社への専門サービスの提供を行っております。なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準につきましては連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

「特定上場会社等」に関する注意点

東京証券取引所が発行している「重要事実一覧」(こちらになります)のP34には、次のような事が書かれています。

重要事実一覧の一文

上場会社が、純粋持株会社を含む「特定上場会社等」である場合、下記のうちⅠ~Ⅲの軽微基準に記載された総資産、売上高等の財務数値として、会社単体の数値ではなく、会社の所属する企業集団(連結ベース)の数値を参照する。なお、Ⅲのうち配当予想の修正については単体ベースの数値で判断する。

ここで重要になる点として「特定上場会社等」が上場会社である場合、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準を計算するには、「連結」がベースであり、それ以外は「単体」がベースになる点です。

「特定上場会社等」は、最近事業年度の損益計算書で決定されます。つまり例えば、昨年度は「連結」の損益計算書をベースにして、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準を計算していたものの、今年は「単体」になるという会社が存在し得るということになります。

重要事実は、↓のブログで紹介しています。ぜひご参考ください。

インサイダー取引規制における「重要事実」とは

まとめ

ブログの中の人は、恥ずかしながら「特定上場会社等以外の上場会社は、単体をベースにして重要事実の軽微基準を計算する」ということを知ったのは、証券会社勤務後しばらくたってからでした。

金融庁の考え方には、次のようなコメントがあります。

Q.「現在の金商法の開示規制や、金融商品取引所における開示制度が連結中心となっていることとの整合性を図り、「関係会社に対する売上高(製品・商品売上高を除く)」が売上高総額の80%以上であるか否かに依らず、全面的に連結ベースとするべく、更なる検討を速やかに開始すべきである。」

このコメントに対し、金融庁は、

A.「ご意見として参考にさせていただきます。」

ガン無視ですね(笑)。私もこのコメントの通り、「特定上場会社等」という用語を無くし、連結ベース一本でしてもいいのではと思うのですが。。。