ブログの中の人は、某大手証券会社の社員であり、公開引受部門に在籍していたことからも、IPO株については以前から多少の知識があります。
ちなみにブログの中の人は、脱サラ後、個人で日本と米国投資を始め、連続で年間70%前後のリターンとなっており、億り人目前の状況にあります。
そんな私でも「IPOだから儲かる」と思って、なんでもかんでもIPO株に申込んだ挙句、ボコボコにされた経験があります。
その経験を活かした記事を書かせていただきます。
ここでは、12月17日に東証マザーズへ上場する株式会社プレイドの発行価格に対して、1個人投資家がどのような考えで評価しているかを説明させていただきます。
投資は、自己責任で!
2020年のマザーズ最大規模のIPO
プレイドの想定時価総額は、500億円を超え、公募半分を超える株を海外に販売する(グローバルオファリングといいます)という今年最大級のIPOです。
イメージは、昨年上場したフリーやsansanと被ります。
フリーもsansanもプレイドが展開する事業領域であるSaaSという流行ジャンルでありまして、よく似た感じです。
またフリーもsansanも大幅な赤字の状態でIPOしました。
きっと想定発行価格の算定をする際は、フリーとsansanが類似会社として出ていたことは間違いないと思います。
グローバルオファリングを行った会社の共通点
最高値をつける前に初値を下回ったことがある
2019年にIPOを達成した会社の中でグローバルオファリングをした会社は、フリーとsansanを含め12社あります。
12社の内、極めて特殊なIPO(発行価格が想定発行価格の1/3未満になるという不人気IPOだったステムリム)を除く11社(フリー株式会社、Sansan株式会社、株式会社JMDC、株式会社メドレー、SREホールディングス株式会社、株式会社JTOWER、BASE株式会社、Chatwork株式会社、HPCシステムズ株式会社、株式会社ブシロード、ランサーズ株式会社)の株価動向には、共通点があります。
- 初値から上場来最高値の差は、最低1.64倍、最高13倍となっているため、IPOセカンダリーで機械的に株式投資を行っていた場合、100%確実に勝てるチャンスがあった。
- 全銘柄で、最高値をつける前に初値を下回る日があった。
- 上場来、最高値をついていたのは、ブシロードの上場後4カ月が最短となっていることから、初値天井に近い銘柄が無かった。
- 全銘柄で、発行価格を下回る日があった(しかし、ほとんどが、コロナショックによる急落が影響しているため、あまり気にしなくてよいかもしれません)。
この仮説は2016年~2018年にIPOを達成した会社にもいえ、11社の共通点を崩す銘柄ような銘柄は、ソフトバンクやSBIインシュアランスグループといった子会社上場、また、そもそもド不人気なIPO(ステムリム)というような会社を含め、極めて少数でした(なお、これら3社の株価動向は、良好ではありませんね)。
さらに12社中、6社の初値が公募価格より下回るという結果になりました。
まとめ
グローバルオファリングをするような会社に対しては、あえてIPOに手を出さす、初値を下回る日を待って株を買い、しばらくホールドして、ダブルバガー~テンバガーになる日を待つという策が最もリスクが無い法則がありそうです。
PSR、売上高前年比、粗利率
プレイドより割安な銘柄がある
株式の銘柄は、大きく2つに分けると「グロース株」と「バリュー株」のカテゴリーになります。
プレイドの株は、典型的な「グロース株」になります。
グロース株の比較評価は、PSRという時価総額を売上高で割った指標、売上高の伸び、粗利高が最重要指標になります。
株価の評価は、PERやEPSを使うケースがありますが、そもそもグロース銘柄は、利益額より成長性が最重要視されるため、PERやEPSは重要視されません。
プレイドのPSR、売上前年比、粗利高は、次のとおりになっています。
PSR | 売上前年比 | 売上計画前年比※ | 粗利率※※ |
---|---|---|---|
13.4 | +84% | +31% | 70.9% |
※ 売上計画前年比とは、プレイドの申請期売上見込み(申請期の四半期決算から計算)を直前期売上高で除した数
※※ 粗利高は、申請期の粗利率
一方、PKSHA Technologyという会社があります。
PSR | 売上前年比 | 売上計画前年比 | 粗利率 |
---|---|---|---|
9.6 | +141% | +21%~+35% | 38.4% |
PKSHA Technologyは、プレイドに比べ、粗利率が劣っていますが、売上の伸びについては見劣りしません。明らかに割安な感じがします。
PKSHA Technologyは、AIアルゴリズムを開発するソフトウェア開発会社であり、プレイドに負けないレベルの市場競争力を持っている会社です。さらにPKSHA Technologyは、黒字の会社です。
本来であれば、IPOの発行価格には、IPOディスカウントがあります。
IPOディスカウントを考慮すると、さらにPKSHA Technologyより、プレイドの発行価格は割高感があるような感じがします。
まとめ
プレイドよりも、PKSHA Technologyなど、割安なグロース銘柄を買う方がリスクが少なそうです。
さらにIPO銘柄に人気があるのは、IPOディスカウントに期待するためです。
IPOディスカウントについての説明はこちらでしています。ぜひご参考ください。
IPOディスカウントの算定は不可能ですが、一般的には30%~40%程度とも言われています。
IPOディスカウントが30%として仮定すると、プレイドはPSRが17~18をフェアバリューとする会社となります。
そう考えるとプレイドの想定発行価格の1,400円というのは、一層割高な感じがします。
グロース銘柄は、今、方向性が難しい局面にある
グロース銘柄の株価は、金利が上がると弱い
11月9日に米国グロース銘柄へ激震が走りました。
ファイザー社が「コロナワクチンの開発が良い感じに進んでるでぇ」という発表です。
米国の株式市場は、グロースに支えられていましたが、これはドルの低金利に支えられたという一面があります。
ここでは説明を避けさせていただきますが、低金利であればグロース銘柄へ流れやすくなり、高金利になればバリュー銘柄へ流れやすくなります。
ファイザー社がコロナワクチンに対するニュースを出したことで、景気先高感が急激に起こり、米国国債の金利が一気に上昇しました。そこで、グロース銘柄からバリュー銘柄へ一気に投資資金がシフトしました。
グロース銘柄で飛ぶ鳥を落とす勢いの会社であるZOOM社やPeloton社が20%超暴落し、ブログの中の人が投資しているCROWDSTRIKE社やTELADOC HEALTH社なども暴落してしまいました。
それ以来、グロース銘柄は方向性が難しくなってきているのは、事実です。
有名ブロガーやすさんが、グロース銘柄の投資リスクは増しているとわかりやすく解説しています。
プレイドの事業は、グロースの中でも特に人気が高いSaaSというビジネスジャンルであり、米国だけではなく、日本にも影響が出ています。
例えば今年、株価が躍進していた新興企業のSaasの会社であるHENNGE、サーバーワークス、フォードフォースなどの株価はピークアウトしているような状況であり、また今年8月にIPOをしたトヨクモの株価は、上場日付近に出した株価水準から上場3カ月で半分程度に沈んでいます。
まとめ
SaaS企業のIPOだからといって、ホイホイ乗ってしまうと、大ケガをする可能性があるような市場環境にあります。
結論
以上により、投資初心者がとるべきスタンスは、次のようになります。
- IPOに申し込んでも良いか、上場直後に株価が上がっても、あまり深追いせず、早めに利益確定する。
- IPOチャレンジポイントなどを使って、IPO株を積極的に取りに行くほどの銘柄ではない。
- IPOセカンダリーに入るのは、プロレベルの人だけにしましょう。
- しばらく静観し、初値または発行価格より下回る株価になるのを待って、再考する。
投資は、自己責任で!