
突然ですが「コーナーストーン投資家」をご存じでしょうか?
「コーナーストーン投資家」と聞いても、上場準備会社関係者を中心とするこのブログの訪問者のほとんどは、ピンと来ず、全く無関係のように思えます。
しかし最近、IPOのファイナンスにおいて、「コーナーストーン投資家」へ親引けを行った事例が存在します。日本証券業協会は、その後押しを進めるべく、規則の改正を行いました。
「コーナーストーン投資家」という用語は、CFOにとりまして、頭の隅に入れておいても良い用語だと思い、情報をまとめましたので紹介させていただきます。
親引けガイドラインの改正内容
日本証券業会は、「公開価格の設定プロセスの等に関するワーキンググループ報告書」を公表(こちらになります。以下「報告書」といいます。)し、「有価証券の引受け等に関する規則」と「親引けガイドライン」の一部改正がありました。
「公開価格の設定プロセスの等に関するワーキンググループ報告書」の内容をまとめた記事は、↓になります。ご参考ください。
また改正された「有価証券の引受け等に関する規則」は、こちらになります。
さらに改正された「親引けガイドライン」は、こちらになります。
親引けガイドラインの改正の趣旨や背景等は、日本証券業協会がQ&A(以下「Q&A」といいます)で公表しています(こちらになります)。
コーナーストーン投資家とは
「報告書」では、「コーナーストーン投資家」について、以下のような説明がされています。
香港では、IPO の上場承認(又はブックビルディング開始)前に中長期保有を確約した投資者への配分の合意がなされ、目論見書等において、当該投資者の概要及び投資金額が開示される仕組み(コーナーストーン投資家制度)がある。
(出所:日本証券業協会「公開価格の設定プロセスの等に関するワーキンググループ報告書」より)
つまり、コーナーストーン投資家は、香港市場におけるIPO関連制度での用語のようです。
東証の制度において、親引けされた株式は、ロックアップされるため、投資家は、最低でも半年間売却できなくなります。
コーナーストーン投資家とは、そのリスクを十二分に理解した投資家でありまして、短期間で株式売買をするようなヘッジファンド等とは異なり、株式を中長期間保有するような投資家になります。
ロックアップにつきましては↓で説明しています。ご参考ください。
Q&Aを拝見しますと、日本国内のIPOにコーナーストーン投資家を参画させることによる期待は、次のようになっています。
- コーナーストーン投資家は、価格算定能力が高い
- IPOに対する市場の信頼性の向上に資する
- 当該発行者のコーポレートガバナンス向上や企業価値向上(コーナーストーン投資家の参画により当該発行者の信用力の向上などのアナウンスメント効果が生じることを含む)に資する
「コーナーストーン投資家」へ親引けした事例
2019年~2021年のIPOの中でコーナーストーン投資家への親引けをした事例は、4例確認でき、以下のようになりました。
表 2019年~2021年のIPOの内、コーナーストーン投資家への親引けをした事例
発行会社 | 上場日 | コーナーストーン投資家 |
---|---|---|
ココナラ | 2021/3/19 |
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セーフィー | 2021/9/29 |
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Finatextホールディングス | 2021/12/21 |
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エクサウィザーズ | 2021/12/23 |
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(出所:IPOAtoZ調べ)
2019年以降のIPOを調査したのですが、ブログの中の人が調べた限りでは、2019年と2020年の事例を確認できませんでした。
即ち、コーナーストーン投資家への親引けは、最近動き出したようですね。
まとめ
コーナーストーン投資家への親引けについて紹介させていただきました。
ブログの中の人の想像ですが、コーナーストーン投資家への親引けに至るプロセスは、上場承認後のロードショー中に、投資家側から発行体側へオファーがあり、それに発行体がOKを出して、契約成立になると思われます。
したがいまして上場承認前からコーナーストーン投資家を探していた発行体は、少ないのではと想像しています。
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