東京証券取引所が発行する「2022 新規上場ガイドブック」において、2021年度版から改訂された所は、数カ所存在します。

その中には、↓のように上場申請会社の配当に関する箇所が追記されていました。

(10)多額の配当等について
Q19:多額の配当や自己株式の取得を行っている場合、審査上どのように取り扱われるのでしょうか。
A19:配当や自己株式の取得(あわせて「配当等」といいます。)は会社法上の手続に則って行われる限り、それ自体が問題視されるものではありません。しかし、上場後に予定する配当性向を大幅に超過するような多額の配当等を上場前に行うことは、上場後の投資計画や財務戦略にも大きな影響を与えることがあります。
したがって、当該判断は上場後の経営計画等も見据えたものであることが求められます。
このような考え方から、上場前において多額の配当等を行っている場合は、当該配当等の実施理由(配当等の実施時期及び金額の根拠、上場後の経営計画等との整合性)及びその決定手続きについて確認します。特に上場直前において、支配株主を有するなど特定の大株主の影響力が強い状況であり、独立社外取締役の参画など上場後を見据えたガバナンス体制の下で議論がなされていないような場合は、既存株主の投資回収を優先するあまり、過度に上場後の株主にリスクを転嫁するものではないか、企業経営の健全性の観点から慎重に確認します。
また、その際には、配当等の実施理由や上場後の配当性向などの考え方について、「Ⅰの部」などに適切に記載していただくことが必要になります。
なお、当該配当等を行うために多額の借入を行っている場合は、財務リスクに関するその他の確認内容(Q5・18 の内容を含みます)と総合して、審査の判断を行います。

(出所:東京証券取引所「2022 新規上場ガイドブック」より)

このような文章が追加されたということは、きっと上場審査または、事前相談で「多額の配当等」をしている会社を相手した事があったことが背景にあることが容易に想像出来ます。

そこで上場達成会社の配当について、調べてみました。

なお、数字等は、ブログの中の人が個人で各社のⅠの部を調べて作成したものでありまして、保証等をするものでは一切ありません。

上場申請直前期の配当政策

2019年、2020年、2021年に東証へ上場達成した会社(TPM市場への上場を除く)におきまして、直前期に配当を支払っていた会社は、表1のようになりました。

表1 2019年、2020年、2021年に東証へ上場達成した会社(TPM市場への上場を除く)の直前期有配企業率

全社 有配企業 有配企業率
東証1部 13 8 61%
東証2部 27 20 74%
ジャスダック 36 20 55%
マザーズ 215 24 11%
合計 291 72 24%

(出所:各社Ⅰの部を元にIPOAtoZ作成)

マザーズ以外の市場に上場達成した会社は、過半数が有配企業でした。

事業成長性を第一に考えるマザーズへ上場を達成した会社の中で有配の会社は、約9社に1社の割合でした。

全体的には約4社に1社が有配企業でした。

上場達成企業の配当性向

表1で有配会社が72社あったと紹介させていただきましたが、さらにそれらの会社の配当性向も調べてみました。

なお、72社の内、直前期の連結純利益が赤字だった会社(アイ・パートナーズフィナンシャル)は、除外しました。

それをまとめた結果を表2に示します。

ただし配当性向は、連結での長期純利益をベースにした計算式で算出したものです。

表2 2019年、2020年、2021年に東証へ上場達成した会社(TPM市場への上場を除く)の直前期有配企業率

配当性向平均 最高値
東証1部 31% 108%(カーブスホールディングス)
東証2部 22% 35%(日本調理機)
ジャスダック 16% 57%(浜木綿)
マザーズ 15% 53%(WDBココ)
合計 18%

(出所:各社Ⅰの部を元にIPOAtoZ作成)

配当性向が高い事例

上述した「2022 新規上場ガイドブック」では、多額の配当を支払っている会社に対して、「なんでそんなに高いの?」という質問をすると宣言しています。そこで多額の配当とは、いくらくらいになるのでしょうか?

上場申請直前期の連結配当性向が高かった会社を表3にまとめてみました。

表3 上場申請直前期の配当性向が高かった会社

社数 会社
100%台 4社 カーブスホールディングス
50%台 4社 浜木綿
WDBココ
フォーラムエンジニアリング
40%台 2社 ローランド
カクヤス
30%台 8社 雪国まいたけ
ヴィス
クルーバー
日本調理機
長栄
エヌ・シー・エヌ
ダイコー通産
KHC

(出所:各社Ⅰの部を元にIPOAtoZ作成)

この中には、上場前から配当支払いを実施することを会社の経営方針としていたこと、また上場後も高い配当を実施する方針・目標であることをⅠの部に明記している会社(カーブスホールディングス:連結配当性向50%、フォーラムエンジニアリング:配当性向60%以上)がありました。

上場会社子会社の配当政策

マザーズ上場を申請する会社は、事業成長性に対する評価が重要な審査対象になります。

したがいまして通常、獲得した利益やキャッシュは、事業成長のための資金に最大限に充当し、株主に還元しません。

しかし、マザーズへ上場達成したWDBココの配当性向は、50%を超えており、極めて高くなっています。

この理由につきましては、↓の記事にまとめています。ご参考ください。

【子会社の配当】WDBココ【IPO事例】

なお、カーブスホールディングスも配当が極めて高い会社になっていますが、WDBココと同じ理由であると推察されます。

まとめ

上場達成企業の配当政策について紹介させていただきました。

上場を目指す会社経営者が「配当は、いくらにしようか?」と考える際に参考にしていただければ、幸いです。

なお、有配企業が上場を目指す場合の注意点を↓で紹介しています。ご参考下さい。

【有配株の注意点】ダイコー通産【IPO事例】

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