
今後、上場承認を受けた後、手続きが一つ増えることになると予想します。
2021 年3月 29 日に株式会社モダリス(4883)は、大株主であり、有名個人投資家の片山晃氏が「ロックアップ」に違反があったと発表しました。
上場企業が遵守しなければいけない規則の「有価証券上場規程施行規則」の第255条を片山晃氏が違反をしたというものであり、この条文を要約すると「直前期末日から遡った1年間において、第三者割当等で株式の割当てを行っている場合には、割当てを受けた株式を上場日以後6か月間を経過する日まで、株式を売却できません。」というものですが、上場日から6か月以内に売却してしまったため、これを違反したというものです。
ロックアップにつきましては、こちらで説明しています。ご参考ください。
ここでは、何があったのか、そしてIPOの実務担当者にとって、どのような対策が起きうるのかを簡単に解説します。
株式会社モダリスにあったロックアップ違反の概要と顛末
株式会社モダリスにあったロックアップ違反についての概要と顛末は、次のようになります。
日 | 内容 |
---|---|
2019年12月10日 | モダリスが片山晃氏へ6,000株(401 百万円及び金 83 百万円後に600,000株)第三者割当増資 |
2020年6月26日 | 上場承認(直前期:2019年12月期) 片山晃氏保有株式数:800,000株と公表 |
2020年8月3日 | 東証マザーズ上場 |
2020年9月1日〜9月16日 | 片山晃氏 モダリス株式600,000株売却(売却金額総額 1,865 百万円) |
2021 年3月 | モダリスが片山晃氏のモダリス株式売却の事実を認識 |
2021年3月24日 | モダリスがロックアップ違反を公表 |
2021年3月29日 | 片山晃氏がモダリスへ484百万円を支払う事で合意し、ロックアップ違反が決着したことを公表 |
モダリスのプレスリリースによれば、片山晃氏が違反をしたのは、極めて単純な”うっかりミス”であり、悪意等は一切無いようです。
片山晃氏がモダリスへ484百万円を支払うことになった内訳を言いますと、次のようになります。
- 401 百万円:当該制度ロックアップに違反する当社株式の売却により片山氏が得た金額と当該制度ロックアップ期間経過後に当社株式を売却した場合に得られた金額との差額相当額
- 83 百万円:有価証券届出書の虚偽記載等に対する金融庁課徴金のルールで、当該ルールを準用して売却金額総額 1,865 百万円に対する 4.5%
プレスリリースの内容を見れば、片山晃氏は真摯に反省している態度を見せているように伺え、とりあえず円満決着したようです。
ロックアップ違反をするとどうなるのか
今回のロックアップ違反は、あくまでも東証証券取引所の規則違反になります。
ロックアップを求められる株主は、「確約書」という書類を締結します。「確約書」とは、「上場してから、6か月間、株式を売却しないことを確約する」というものになり、記名押印が必要になります。
なお、確約書とは、東証のサイトのこちらにある「継続所有に関する確約書(募集株式)」になります。
有価証券上場規程施行規則の504条には、上場契約違約金について定められていますが、これはあくまでも上場会社に対する違約金を定めたものでありまして、株主の違約金を定めるものではありません。
そのため、今回のロックアップ違反は、あくまでも片山晃氏がモダリスへ迷惑をかけた。その迷惑料を支払ったという体になりました。
ロックアップ違反を防止するために
この度、ロックアップを遵守するためには、結局個人任せという事が露呈されました。
今後は、この違反事故を教訓とし、ロックアップする株式については、主幹事証券会社の口座にて管理が一本化される可能性が出てくると思われます。
上場承認後、即時、IPOの実務担当者は、ロックアップの株式を保有する株主が主幹事証券会社に口座を保有しているかどうかを確認し、保有していなければ、口座開設を促すという手続きを進めていくというプロセスが追加されるかもしれません。
その後
本件とは直接関係ないですが、モダリスは、その後、↓のようなことがありました。
ご参考ください。