監査役等に対するインセンティブプランの基本的な考え

IPOを目指す会社が、役職員に対し、モチベーションアップを狙い、ストックオプションなどのインセンティブプランの導入をする会社は多く存在します。

しかし残念ながら、その中で、社外監査役や社外取締役、または監査等委員である取締役(以下では「監査役等」といいます)は置いてきぼりを食らいがちです。

監査役等は、取締役の暴走に対してブレーキをかける重要な役割を担っています。

監査役等に対するインセンティブプランを導入すると、監査役等が短期的な株価向上に意識が強くなり、ブレーキ役としての役割を果たせなくなるのではないかと懸念が生じると言われています。

大手の機関投資家、例えば企業年金連合会や三井住友トラスト・ホールディングス、三菱UFJ信託銀行等は、監査役等に対するストックオプションの付与を反対しています。※すべての機関投資家が監査役等に対するストックオプション付与に対して反対しているものではありません。)

IPOを目指す会社の注意点

上場会社が発行するストックオプションや株式に比べ、IPOを目指す会社が発行するストックオプションや株式は、極めて大きなリターンを期待できる魅力的な有価証券です。

そのため、「ストックオプションや株式を保有している監査役等は、ブレーキ役としての役割を本当に果たせるのか?」と疑われます。

したがいまして、監査役等がストックオプションや株式を保有している会社が上場申請しようとする場合、上場審査等において、その経緯や理由について、質疑応答が出る可能性が高いと考えられます。

IPOを目指す会社が監査役等にストックオプションを付与しようとする場合、または第三者割当をしようとする場合、主幹事証券会社の担当者に事前相談してから、実行すべきです。

社長が社外監査役へ株式を贈与した事例

株式を使った役職員のモチベーションアップ戦略の中でオーナー社長が自身で保有する株式を役職員に贈与するパターンがあります。

2019年1月以降、本ブログ作成段階までに東証へIPOした企業183社の内、3社が行いました。

その内の1社で、オーナー社長自身が保有する株式を、社外かつ非常勤監査役(以下「A監査役」といいます)へ贈与した事例が存在します。

ストックオプションは権利行使時に権利行使価格の払込が必要であり、第三者割当の場合も株価の払込が必要になるため、一定のリスクが発生します。

しかし株式の贈与は、完璧にノーリスクです。

なお、Ⅰの部を見るかぎり、この会社社長は、A監査役に対してのみ贈与を行っており、他の役職員に贈与を行っていません。さらに贈与を行ったと同時に、他の常勤取締役に対して、社長は株式売却をしています。

オーナー社長が、社外監査役かつ非常勤監査役のみ、自社の株式を贈与するという事例は、極めてレアであり、審査で間違いなく、その理由を問われたと推察します。

一般的な見地からすれば、この贈与は、絶対にネガティブになると思われます。

この会社社長は、A監査役に対し、”特別の計らい”を行っており「A監査役は、この社長に対する監査が本当に出来るのか?」と疑わしくなってしまうためです。

ただし、前例があったということは、社外監査役への株式贈与というインセンティブプランが不可能ではないということを示しています。

社長が社外かつ非常勤監査役へ株式を贈与した理由

社長がA監査役に対し、株式を贈与した理由は、「長期間、この会社へ貢献したこと」と「企業統治を向上するため」の2つを挙げています。

A監査役は、9年間、この会社の監査役になっており、A監査役が就任時、この会社は、設立間もない時期でした。

A監査役の他にも、ほぼ同じ期間、社外取締役に就任している方がいますが、その方はすでに上位3位の大株主である事から、贈与する対象には当たらなかったと推察します(なお、A監査役は、この贈与があるまで、株式を所有していませんでした)。

その他の役員は、社長を除き、直前々期または直前期に入社または就任した人ばかりでした。

社長にとって、A監査役は、他の役員よりも特別な存在なのかもしれません。

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