上場審査では、審査中に社会問題になっていることに対する対応状況について、問われることが定番です。

新型コロナウィルス(以下「コロナ」といいます)が最大の社会問題になっています。

そこで、コロナに関する想定問答を作成してみました。ご参考くだされば幸いです。

なお、この上場審査想定問答例は、第1波が出た当時に作成したものです。

Q1 従業員にコロナ感染者が出たことはあるか?

  1. 〇月〇日に当社従業員〇名がコロナに感染していることが判明しました。感染者の発生を受け、保健所の指導のもと、当該従業員と同じオフィス(部署/工場など)に従事し、濃厚接触者と思わしき従業員に対して、自宅待機を指示しました。そして、オフィスの消毒作業等の措置を実施しました。現在、該当者は、経過観察期間を経て、全員、通常業務に復帰しています。その後、その他の役職員に感染者は判明しておりません。
  2. 当社役職員の中に感染者は、判明しておりません。

Q2 役職員へのコロナ感染の防止策は?

  1. 経団連が公表した「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を参考にして、全社的な対策を実施しています。当社では〇部において、コロナ感染症対策チーム(本部/責任者/部門など)を設置し、感染症法、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の関連法令上の義務を遵守するとともに、労働安全衛生関係法令を踏まえ、衛生委員会や産業医等の産業保健スタッフの活用を図ることから開始しました。そして次に、コロナ感染症対策チームが一元的に感染予防策の情報収集および発信をしています。感染した者および感染の疑いがある者は、同対策チームへ連絡し、速やかに自宅待機を指示する体制を整備しています。
  2. 感染リスクを低減するために、当社従業員には在宅勤務を奨励するとともに、不要不急の出張(会議/接待/同僚との飲み会/訪問営業など)を禁止しています。
  3. 「ソーシャル・ディスタンス」を意識して、オフィスレイアウト(店舗/工場ラインなど)の見直しを行いました。

Q3 テレワークの対応状況は?

  1. コロナ感染拡大以前より、働き方改革の一環として、テレワークを導入し、ノートパソコンの貸与、ウェブ会議システムの活用や在宅勤務の奨励等を行っており、多くの従業員が活用しています。現在のコロナの感染拡大にも十分対応できるような体制になっていると考えています。
  2. (データを示せれば)テレワークの導入により、通勤時間が短縮した結果、営業担当社員の顧客訪問回数や顧客滞在時間の増加につながり、顧客満足度のアップに結び付きました。
  3. 今後、テレワークをさらに推進することにより、オフィススペースを減らすことを含め、オフィスレイアウトを見直し、オフィスコストの削減を考えています。
    • テレワークについて、①これまで行った活動内容②効果③今後の方針を具体的に説明することがよいと思われます。
    • テレワークについては労務管理に関して問われる可能性があると思われます。厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」に則った運用の徹底を図っており、パソコンの使用時間の記録によって、労働時間を管理しているとアピールできるようにすることをおすすめします。

Q4 コロナの感染拡大による事業や業績への影響は?

  1. コロナの影響が明らかになっている案件は、〇月に〇件〇円分、〇月に〇件〇円分の受注予定案件が延期(中止など)に至りました。〇株式会社向け〇案件については、〇株式会社の〇という影響が最も大きいと営業から報告を受けております。現在は〇という対策を実施し、業績の早期回復を目指しています。また、コロナが終息し需要が持ち直した際に当社製品(サービス)の販売機会を失うことがないように〇という対策をして、準備しております。
  2. コロナの社内感染防止策やテレワーク推進策で〇月に〇円、〇月に〇円の経費をかけました。これは期初予算立案時には、想定していなかった経費がかかりましたが、この経費については、不要不急の経費削減により、ほぼ賄うことができたため、会社全体の経費予算への影響は軽微であると考えています。
  3. コロナによる不景気が危惧され、当社ではその影響を最小限に抑えることを目的とし、〇月に与信管理の見直しを行っております。一方、有望な人材を採用できる絶好の機会であると捉えており、人事部は〇の活動をはじめました。
    • 「コロナを原因とした、失注案件や失注金額など」「コロナを原因とした、受注案件や受注金額など」「コロナ対策をするためにかかった投資内容や発生コスト」について、具体的に説明できる準備をすべきと考えます。経営管理をしっかりと行っていることをアピールしましょう。
    • リスク管理やアフターコロナに向けた前向きな対策をアピールすることもおすすめします。
    • 最もやってはいけない質疑応答例は、「マーケティングや研究開発費など会社が成長するためのコストを削って、コロナ対策をするためのコストに充てた」または「コロナの影響について、経営は何も把握していない」と回答することです。