消費者庁は、「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第 118 号)の解説」を公表しました。
この解説は、公益通報者保護法に基づく指針に対する具体例を示したものであり、上場会社に限らず、全ての株式会社が関係する解説になります。
ここでは簡単ではありますが、この解説を紹介させていただきます。
公益通報者保護法とは
この法律は、文字通り、公益通報者の保護を図るための法律です。
内部通報をした人に対する解雇を防止することや、外部通報した人に対する不利益を防止するなどが定められています。
公益通報者保護法の概要は、こちらになります。
もし、公益通報者を保護せず、公益通報者を「特定させる」ものを漏らすようなことをした場合、その違反に刑事罰(30万円以下の罰金)が存在することに注意が必要になります。
公益通報者保護法とコーポレートガバナンス・コード
IPOの審査では、コーポレートガバナンス・コードの遵守状況について、ひとつひとつ確認されます。
コーポレートガバナンス・コードの内容は全て遵守する必要はありませんが、遵守していない場合、遵守しない合理的理由を説明することが必要になります。
コーポレートガバナンス・コードの中には、公益通報者保護法に関係する箇所が存在します。
したがいまして、上場を目指す会社は、絶対無視出来ない法律になります。
上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。
つまり上場準備時には、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する条文が入った規程を制定する必要があります。
「公益通報者保護法に基づく指針」とは
2022年6月までに施行予定の公益通報者保護法改正により事業者に次の二つの措置が求められることになり、それに併せて、この指針が出されました。
こちらになります。
- 公益通報対応業務従事者の定め
- 従事者として定めなければならない者の概要
- 従事者として定めなければならない者の定め方
- 公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置
- 部門横断的な公益通報対応業務を行う体制整備
- 公益通報者を保護する体制整備
- 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
「公益通報者保護法に基づく指針の解説」とは
この度公表された解説は、次のような構成になって解説されています。
表 公益通報者保護法に基づく指針の解説の構成
項目 | 概要 |
---|---|
① 『指針の本文』 | 指針の規定を項目ごとに記載した項目 |
② 『指針の趣旨』 | 指針の各規定について、その趣旨・目的・背景等を記載した項目 |
③ 『指針を遵守するための考え方や具体例』 | 指針を遵守するために参考となる考え方や指針が求める措置に関する具体的な取組例を記載した項目 |
④ 『その他の推奨される考え方や具体例』 | 指針を遵守するための取組を超えて、事業者が自主的に取り組むことが期待される推奨 |
こちらになります。
この解説では、色々書かれていますが、この解説の具体例を採用しなくとも、適切な対応を行っていれば、公益通報対応体制整備義務等違反となるものではないとなっています。
まとめ
公益通報者保護法の対象となる法律一覧は、こちらになります。
この一覧は、公益通報者保護法だけではなく、自社に関与する法律は何かを洗い出す際に利用できそうです。
また消費者庁が提供している公益通報者保護法に関するサイトは、こちらになっています(しかし、古い情報が入っており、今では異なる解釈になっている内容が含まれています。ご注意ください)。