米国の証券市場には、SPAC銘柄というジャンルの企業への投資がちょっとしたブームのようになっています。

SPAC銘柄とは、一般的な形で上場を果たしていない上場銘柄です。

ソフトバンクグループは、同社が出資するSPAC企業がナスダックへ上場すると発表しています。

東南アジアにおける配車大手のグラブが過去最高の4.3兆円でSPAC上場するというニュースが出ています。

ちなみに時価総額4.3兆円の日本企業とは、日本郵政やセブン&アイホールディングス、三菱商事クラスとドッコイドッコイです(凄い!)。

インドにおいては、アマゾンよりもシェアが高い最大手ネット通販フリップカート社がSPACを通じた上場を検討しているという情報も出ています(多分、グラブを超えるでしょうね)。

米国のSPAC銘柄に対する注目が高いことを受け、日本の証券市場でもSPAC制度の導入を求める意見が少なくない状況にあります。

ブログの中の人は、趣味で米国株投資をしておりまして、先週末にSkillz Inc.というSPAC銘柄の株式を購入しました。

ここでは、ブログの中の人は、自分自身がSPAC銘柄を購入したきっかけにSPACのことを少し学習しましたので、ここで簡単に説明させていただきます。

なお、この記事はSPAC銘柄の購入を推薦するものではない事に留意をお願いします。

また本ブログ記事の内容については、いくつかの米国ニューヨーク証券取引所やいくつかの米国法律事務所の英文サイトをベースに作成しておりまして、間違いがあるかもしれません。

見解につきましては、個人的な見解であることにご理解くださいますようお願いします。

SPACの概要

SPACとは、どういう会社なのかを簡単に説明します。

SPACの概要
  • 事業を行っていない
  • 非公開企業の買収を行うための器として資金調達をする
  • 買収可能期間(一般的には、上場から24カ月)があり、その期間内に買収が出来なかった場合、上場時の調達資金を株主に返還しなければいけない(買収時には、株主総会での承認要)
  • 一般的には、投資アドバイザー、ファンド、大資産家等がスポンサーになって組成する
  • 上場時の調達資金総額の100%以上を企業買収までの間に信託する必要がある
  • 買収する会社の規模は、信託資金の80%以上の公正市場価値を有する対象会社でなければいけない
  • ヘルスケアやハイテク、ソフトウェアなど、買収しようとするセクターを決めて組成するケースが多いなど

VCや資産家等がスポンサーとなってSPACという”器”を作って上場し、その器が上場後2年の間に、将来性豊かな非上場会社を見つけて買収するという流れになります。

つまり、SPAC銘柄とは、その会社自身で上場審査を受けてIPOを成し遂げた上場会社ではなく、資金だけを持つ器に買収されて上場した会社ということになります。

SPACが上場する際の公募は、ユニット単位(価格は、10.00ドル)で行われており、その価格は標準化されています。

SPACの取引は、「ワラント(新株予約権)」と「株式」を分離して市場取引が出来るようになっておりまして、その取引は、原則上場後52日経過後からとなっています。

その他、SPACの既存株主(スポンサー)に対するロックアップ期間は、通常のIPOの場合のロックアップ期間より長期になっていることなど、通常のIPOとは色々な面で異なっています。

SPACによる企業買収の方法は、「逆三角合併」という方法で合併している事例が多いとのことです(現在、日本では、逆三角合併による方法での合併が認められないと思います)。

ちなみにSPACの火付け役と言われている人として、Chamath Palihapitiya氏がいます。Virgin Galacticという宇宙旅行サービスを目指す会社への関与で有名です。

SPACのメリット

SPACが注目されている理由は、次のようなメリットがあるためと言われています。

SPACのメリット
  • 通常の上場より、上場プロセスが迅速に行われ、かつコストが低いと言われている。
  • 買収される会社(SPACを通じて上場する会社)は、証券市場で実績を持つスポンサーによる経営への関与や資金提供等を期待できる。
  • セーフハーバー・ルールが適用されるなど

米国のSPACに対する上場審査プロセスや開示資料等は、基本的に通常のIPOと同じようですが、実務的な面として、財務諸表には過去の業績や記載すべき資産が存在せず、またリスク等の記載についても非常に少なくなるため、相当簡略化されるものと考えられます。

したがいましてIPOのための審査において、チェックする対象そのものが少ないということになりますので、通常のIPOよりも相当短期にIPOの手続きが完了することです。

ただし、SPACのスポンサーは、上場時点で具体的な投資案件があってはならないようです。具体的な投資案件があれば、上場時点で開示を求められる必要があるようです。

なお、SPACの上場時の上場プロセスは、迅速に行われる一方、買収時にはレビューを受ける必要があります。そのレビューには2~3年分の会計監査済の財務諸表の添付が必要になるようです。

セーフハーバー・ルールが問題視されている

SPACのメリットの中に「セーフハーバー・ルールが適用される」とあります。一方、通常のIPOにおいては、セーフハーバー・ルールが適用されないようです。

これは、実際の業績が事業計画に対し未達成であった場合、株主等から虚偽記載等を理由とする損害賠償請求の訴訟がされるリスクがあるかないかということです。

一般的なIPOにおいては、このルールが適用されないため、損害賠償請求の訴訟がされるリスクがあり、それを免れるようにするためにIPO時の目論見書には事業計画を記載しないことが通例のようです。

一方、SPACの場合は、事業計画に関する訴訟範囲について免除規定があり、訴訟リスクが限定されていることから、SPACによる買収時の書類の中に事業計画を積極的に記載して、ファイナンスおよび株価形成のためのアピール材料にするようです。

後述しますが、SPAC上場する会社の中に、投資家からの歓心を買おうと、バラ色でムチャな事業計画を記載するインチキな会社が続出していることが問題になっています。

それを受け、SPACのセーフハーバー・ルールに関する議論が米国で行われて始めているようです。

東証でもSPAC上場が可能か

現在、また2022年4月に行われる予定の市場区分見直し後も、SPACの上場は、不可能です。

各市場がある形式要件が存在し、SPACには合致しない要件が多く存在するためです。

現在の形式要件については、こちらで説明しています。

形式要件【IPO用語】

すなわち、東証でSPACが上場できるようにするためには、SPAC専門の市場を創設することになるのではと考えます。

まとめ

上述した「セーフハーバー・ルールが問題視されている」のところで少し説明させていただきましたが、SPAC銘柄の中には、詐欺まがいの疑惑がある会社が存在しているのは事実です。

特に二コラというEVトラックメーカーの疑惑は、ひどい話です。

また最近、Lordstown MotorsというEVトラックメーカーは、予約受注台数偽装しているのではということも続き、SPAC銘柄は疑惑が連続しています。

実は、私が先週に投資したSkillz Inc.にも疑惑がありまして、株価は爆下げ中です。

私はそれを承知の上、若干、博打感覚で逆張り投資しました(皆様には、絶対におススメしません)。

ほとんどのSPAC銘柄の株価は、総じてボロボロの状況でして、まともな株価を形成しているのは、DRAFTKINGS INCというオンラインカジノなどを展開している会社くらいじゃないの?と思うくらいです。

まともな会社は、SPACを使わず、通常のプロセスでIPOを行うことが今でも一般的であるという風潮は今日もあり、SPAC上場は、裏口上場と同様と考えている人は少なくないと思います。

これまでを読むとSPAC上場会社は、一般的なIPOで上場した会社と比較して劣っていると思われますが、私自身はそう考えておりません。

そもそも米国の上場審査は、日本の上場審査よりハードルが低いと言われているからです。

米国の上場審査では、日本のように実質審査基準について審査を行わないこともあり、一般的なIPOで上場した会社の中にもボロボロな会社が多く存在します。

日本のIPO不祥事と比較しますと、上場後半年で破産するようなエフオーアイクラスの不祥事は滅多にないものの、上場1か月後に大幅下方修正したようなトゥエンティフォーセブンクラスは、頻繁にあるというイメージでほぼ間違いないと考えています(ブログの中の人は、米国IPO企業への投資を少しやっていまして、幾度も被弾した経験があります)。

米国の証券市場は、日本の証券市場より遥かに「スクラップ&ビルド」または「破壊なくして創造なし(故橋本真也さんの言葉より引用)」の精神が強く、リスクマネーに対する理解力や度胸が段違いに大きく、例えば債務超過で上場達成する会社もあります。

今の米国の現状を見れば、日本が米国の真似した形でSPACを導入するのは、課題が多いと思いますが、シンガポールは上場解禁を決めました。

もし東証が見送れば、名証、福証、札証が積極的に検討してもよいのではと考えますが、いかがでしょうか。