「監査法人がIPOを目指す会社に期待すること」が書かれています。

金融庁は、令和元年12月に「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の 選任等に関する連絡協議会(以下「協議会」といいます)」を発足しました。

なぜこのような協議会が発足されたかといいますと、次のような2つの問題意識からになります。

問題意識
  1. IPO を目指す企業は増加傾向にある一方で、こうした企業が監査事務所との需給のミスマッチ等により、必要な監査を受けられなくなっている。
  2. 会計監査は、企業がIPOを達成するための重要なインフラとしての役割がある。その一方、監査品質の確保はすべての議論の根幹となるものであり、監査事務所において必要な人員や監査時間等を確保できないにも関わらず、監査を引き受けることで品質を低下させ、監査そのものの信頼性を損ねることがあってはならず、インフラとしての対応と監査品質の確保を両立させていくことが求められている。

発足以降、3回にわたって協議を行い、令和2年3月27日に報告書が公表されました。

この報告書の中で、IPOを目指す会社にとって、最も重要な箇所は「Ⅳ.IPO を目指す企業に期待すること 」です。

「IPO を目指す企業に期待すること」の要約
  1. 新規・成長企業は、その成長ステージに応じて、必要な内部管理体制を適切に構築していくことが重要であり、経営者は、専門的知見を有する公認会計士を積極的に活用していくことが望まれる。
  2. 今後、多数の投資家の投資対象となる上場企業として、必要な内部管理体制を構築した上で、企業情報の適切な開示等を通じ、投資家から集めた資金をどのように活用して事業を行なっているかについての説明責任(アカウンタビリティ)を将来にわたり継続的に果たしていく責務を負うことの認識を深めていくことが重要である。
  3. 上場準備期間の監査や証券会社の引受審査は、単なる数字や形式のチェックではなく、経営者の資質、企業カルチャーも含めた企業経営の健全性、事業内容等を独立第三者の立場で検証し、将来にわたって投資家の期待に応えられる企業となるための土台を固める重要なプロセスであるとの理解の共有が重要である。
  4. 目指す成長スピードを実現しつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上が図られるよう、監査法人や証券会社との対話を深め、上場準備その他の必要な対応を図っていくこと。
  5. 監査法人の限られたリソースを有効活用すべく、決算期を現行の多くの上場企業と異なる時期とする
  6. 決算期から株主総会までの期間を見直し、有価証券報告書を株主総会前に提出することにより、株主・投資家に対する情報提供の一層の充実を図る。

(出所:「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の 選任等に関する連絡協議会報告書」より引用)

監査難民で悩んでいる会社の解決法のひとつとして、決算期を3月以外の決算期に変更するということも考えられます。