IPOを目指すとなると、最初に監査法人や主幹事証券会社から、「コーポレート・ガバナンスを整備しましょう、強化しましょう」と言われます。経験者以外、ピンとくる人なんていません。
なおコーポレート・ガバナンスの用語解説は、こちらになります。
ここでは、ここではコーポレート・ガバナンスを強化する上でポイントになるところをわかりやすく解説していきます。
コーポレート・ガバナンス強化の目的
上場審査におけるコーポレート・ガバナンスに関するチェックの大きな視点は、社長等への権限が集中しやすい人(以下では「権限者」といいます)への一極集中から脱却しているかどうかの確認になります。
売上や利益が大きく伸長していても、権限者へ権限が一極集中している会社は、権限者に万が一のことが発生すると、企業経営が混乱する可能性が極めて高くなります。
また権限者の保身を目的とした不正に走りやすくなります。
このような会社に対する投資価値は大きく劣ってしまうため、権限者から脱却していない会社であると評価されてしまうと、IPOは困難になります。
コーポレート・ガバナンスが弱い会社は、危なすぎて投資対象にならない
コーポレート・ガバナンスの組織
日産自動車のカルロスゴーン事件を通じて、社長個人に対する監視能力の重要性が再認識されました。
東芝の不適切会計事件を通じ、取締役会全体に対する監視能力の重要性が再認識されました。
また経理担当者が領収書や請求書等を偽造し、自身の個人口座へ会社資金を振り込ませるというような事件の都度、経理部門に対する監視能力の重要性を再認識します。
引受審査や上場審査では、これらの会社が起こした不祥事と同様な不祥事を起こさないような体制を持っているのかどうかを確認されます。
コーポレート・ガバナンスの代表的なイメージは、以下のようになります。
図 監査役会設置会社におけるコーポレート・ガバナンスのイメージ例
コーポレート・ガバナンスでやるべきことは、それぞれの機関がどこかに監視されているという緊張感がある組織づくりです。
上の図にある「株主総会」「取締役会」「代表取締役」などの事を総じて「機関」とよび、それぞれの機関をどのように結び付け、運用を行っていくかを検討・決定していく事を「機関設計」といいます。
審査では各機関(取締役会・監査役会・内部監査・監査法人)の有効性と連携状況が確認されます。
「コーポレート・ガバナンス体制の強化」とは、各機関の連携を密にしながら、各機関の機能を活発化させることをいいます。
- 取締役会、監査役会、内部監査、監査法人がそれぞれの権限と役割を把握しているか
- 取締役会、監査役会、内部監査、監査法人がそれぞれの権限と役割を十分に発揮しているか
- 取締役会、監査役会、内部監査、監査法人が相互に報告連絡相談や意見具申を行い、情報共有を密にとっているか
- 取締役会、監査役会、内部監査、監査法人は、それぞれが各機関から受けた意見具申に対する対応や活動を行っているか
コーポレート・ガバナンスでやるべきこと
「権限者に対して、意見をどんどん言えるような企業風土を持ち、権限者がその意見を謙虚に聞く会社」であると評価を受けると、上場審査においてコーポレートガバナンスに関する評価が高くなります。
そのような会社であると評価されるための前提条件として、第三者が評価できるような記録を整備することが重要になります。
最悪なのは「社長へキチンと意見具申をやってますよ」と口頭だけでしか回答ができないことです。これだけでは第三者は全く評価できません。重要なのは書面の記録です。
コーポレート・ガバナンスに関する株式公開準備におけるポイントは、以下のとおりです。
- 上場直前々期末までに、各機関に関係する資料(議事録等)のフォーマット類を整備する。
- 上場直前期は、各機関(特に「取締役会」「監査役会」「内部監査」)が有効に働いていることを示す証跡(特に各機関の議事録)を残して、ファイリングする。
- 特に、権限者に対する意見具申の内容は、しっかりと議事録に残すことを意識する。
- 各機関は、定期的に情報連絡会等(最低でも四半期に一度)を行い、議事録を残し、その議事録には出席者や日時を明記する。
IPOを目指す場合、東証が定めたコーポレートガバナンスの原則・指針に則った運用が求められます。
それはコーポレートガバナンス・コードと呼びます。
コーポレート・ガバナンスの分析
上場会社がどのようなコーポレート・ガバナンスの体制を持っているのかを調べる方法は、日本取引所グループが公表している「コーポレート・ガバナンス情報サービス」が参考になります。
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