従業員持株会の導入検討中の会社、または既に存在している会社の方々がご参考ください。

Ⅰの部チェック

東海ソフト(株)の筆頭株主は従業員持株会であり、その持株比率は26%を超えています。
東海ソフト(株)が上場しますと、従業員持株会が保有する株式の時価総額発行価格をベースに計算すると約6億5千万円強になります。
このようなケースは稀にありまして、IPOを達成した際に従業員持株会が保有する株式時価総額の最も規模が大きいケースと言われた1社が(株)リクルートホールディングスであり、その額はなんと約2千億円でした。リクルートグループには、IPOによって億万長者が続出したそうです。

東海ソフト(株)や(株)リクルートホールディングスは、従業員持株会が積極的に株式を購入し、結果的に大成功に終わった事例です。しかしその一方で、従業員持株会の運営に失敗したところも多く存在しています。

今回は、従業員持株会へ自社株式を購入させる際の留意点を述べさせて頂きます。

ポイントIPOを目指す準備段階に、従業員持株会を組成する事は、当たり前のようになっていますが、従業員持株会へ自社株式を購入させることは計画的におこなわなければいけません。最悪なのは、自社株式を購入する者が誰もいないため、従業員持株会の拠出金をまるで”打ち出の小槌”のように考えて、従業員持株会へ自社株式を購入させるケースです。そのように従業員持株会を利用してしまうと、従業員持株会の拠出金が枯渇し、従業員持株会の運営が継続できなくなるリスクが高まり、最悪のケースは破綻することになります。

従業員持株会の拠出金が枯渇すると・・・
  • 退職等の理由により、持株会からの退会希望者が出ても、速やかな退会処理ができなくなる。
    • 持株会会員の中から、我先に退会して拠出金の返金を求める動きが一気に出るリスクが出る。
    • 従業員から、会社の経営状況への不安感や不信感が増す。
  • 退会処理が出来ない場合、以下の措置が必要になる。
    • 拠出金が貯まるまで、退会処理手続きを待ってもらう。
    • 拠出金の返金をせず、持分株式を返す。

従業員持株会が破綻すると、解散に向けた動きを進めざるをえなくなります。破綻状態の持株会が解散すると、会員つまり従業員が損失を被る事になります。

従業員持株会の破綻は、従業員が会社経営に対する不信感を一気に増すトリガーになりかねません。

従業員持株会の破綻リスクを低減させるためには、以下のような事が考えられます。

  • 大口の会員が複数退会しても、退会処理手続きが可能な拠出金を常時プールするような運用をする
  • 従業員持株会が株式を購入する前に、株価の根拠等の説明を会員へ行うなどにより、持株会の運営状況をオープンにする
  • 従業員持株会が株式を購入するのは、上場スケジュールが具体的に進展した段階(例えば、申請期)に限定する