会社法で定められた監査役の員数
公開会社になれば、法令に定める取締役や監査役の員数が必要になります。
なお社外監査役の定義は、こちらで説明しています。ご参考ください。
IPOを目指す会社の中には、法令に定められた最小の員数で監査役会を組織化している会社が多く存在します。
コストをできるだけ抑えたいという理由が主な理由であると推察します。
しかしそれは、万が一の事態が起きた場合、会社法で定める員数を欠くというおそれが生じてしまいます。
もし、そのような場面に遭遇したとき、簡単に社外監査役を招聘するというのは出来ません。
ユーピーアールの目論見書
2019/6/12に東証2部へ上場したユーピーアール株式会社の目論見書には、以下のような記載があります。
法令に定める監査役の員数を欠くことになる場合に備え、会社法第329条第3項に定める補欠監査役1名を選任しております。補欠監査役の略歴は次のとおりであります。~(後略)~
ユーピーアールの監査役の員数は、3名になっており、会社法で定められた員数のギリギリにあります。
そこで万が一、監査役の員数が、会社法で定められた員数を欠くそのような場合に備え、補欠監査役という監査役を選任しています。
上場会社の中には、ユーピーアールのように補欠監査役を選任している会社が多数存在します。
ユーピーアールのように、監査役会が3名のみで構成されており、この中の1名に万が一のことがあれば、緊急事態です。もし申請期にこのような事態が発生すれば、上場延期を招く可能性があります。
補欠監査役
補欠監査役とは
補欠監査役は、会社法第329条と第336条に定められています。
- 役員及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
- ~(略)~
- 第一項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この項において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
- 監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
- ~(略)~
- 第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
ちなみに監査等委員会設置会社には、監査役が存在しないため、「補欠取締役」といいます。
補欠監査役の選任例
ユーピーアール以外にもIPOの準備段階において、補欠監査役を選任している会社があります。
- アクリート
- Link-U
- ツクルバ
- ローランド
- フェイスネットワーク
- 神戸天然物化学
上で取り上げた会社は、全て監査役の員数が3名だけでした。
また補欠監査役のほとんどは、社外監査役としての資格のある者でしたが、ローランドは社員を補欠監査役に選任していました。
補欠監査役に関する資料
補欠監査役制度に関する詳しい資料は、日本監査役協会が公表しています。
補欠監査役選任制度に関するQ&A集:https://www.kansa.or.jp/support/library/post-516/
補欠監査役選任制度についての法務省の解説:https://www.kansa.or.jp/support/library/post-510/
監査役の員数が3名のみの会社は、直前期になったときに補欠監査役の選任を検討してみてはいかがでしょうか。