これまで、特にIPOコンサルを中心としたIPO関係者の方々から「会社が従業員持株会に貸付して、会社の株式を買わせるって出来るの?」という問い合わせを何度も受けました。

非上場会社の従業員持株会に関する文献は、世の中にあまり存在しないため、回答に苦慮しているようです。

ここでは、その回答内容を簡単に説明させていただきます。あくまでもブログの中の人の個人的な考えであることにご留意頂きますようお願いします。

なお、従業員持株会については↓で紹介しています。

【上場準備担当者向け】「従業員持株会」をくわしく解説

持株会への貸付金は、持株会会員に帰属します

従業員持株会は、民法に基づく組合として位置づけされます。

したがいまして、従業員持株会の資産は、全て持株会会員に帰属することになります。

つまり、従業員持株会に負債がある場合、持株会会員が負債を直接的または間接的に背負うことになります。

それが、企業の負債と従業員持株会の負債が異なる最大のポイントになります。

そこで、会社が従業員持株会へ貸付をする場合の選択肢は、↓のようになります。

選択肢1:一部会員が負債を背負うことになる

選択肢2:全会員が負債を背負うことになる

選択肢3:ダミーで会員を作り、ダミー会員が負債を背負うことになる

    従業員持株会の会員へ負債を背負わせる場合

    まず、負債を背負うことになる会員個人から了解を得る必要があります。

    これを無視すると、大問題になることが想像できますね。その交渉は、相当ハードルが高いのではないでしょうか。

    従業員持株会へ貸付を検討するきっかけが、従業員持株会会員のニーズから発生したのではなく、会社から発生した場合、尚更ですね。

    もし、幸運なことに持株会会員から了解を得た場合、個別に金銭消費貸借契約を締結するプロセスになると思われます。

    したがいまして、ラッキーなことに従業員持株会の会員へ負債を背負わせることが成功した場合、結局、従業員持株会に貸付するのではなく、従業員持株会会員個人に貸付をすることになりそうです。

    以上のような理由から、ブログの中の人は、従業員持株会に負債を背負わせることは、無理ゲーだと考えています。

    ダミー会員を作る場合

    ダミー会員に貸付をするという事は、ダミー会員が実質的に自社株式を保有することになります(名義は持株会理事長です)。有配の会社であれば、ダミー会員が配当を受け取り、ダミー会員が税金を支払うことになりますね。

    さらにもしダミー会員の配当が3万円以上になれば、「信託の計算書」という税務調書を発行する必要があります。その調書は、マイナンバーが記載要件になります(信託の計算書のフォーマットは、こちらになります)。ダミー会員のマイナンバー?

    したがいまして従業員持株会にダミー会員を作ることは、明らかな脱法行為のような感じがしますね。

    ある証券会社では、上場前のあるタイミングで持株会会員の反社チェックをかけるそうです。ダミー会員も反社チェックをかけるのでしょうか。よくわかりません。

    ブログの中の人は、ダミー会員を作るスキームで従業員持株会に負債を背負わせることも、無理ゲーだと考えています。

    まとめ

    従業員持株会への貸付がダメな理由を簡単に説明させていただきました。

    なお、従業員持株会への貸付が、第三者割当増資と同じタイミングの場合、架空増資と疑われる可能性も出てくると思います。

    もし、うまく切り抜けるノウハウをお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひお教え下さい。

    IPOAtoZでは、Twitterを使って、IPOの最新情報を発信しています。

    ぜひフォローをお願いします。