IPOを目指す場合、会計管理体制の整備を行う必要があります。ここでは会計管理体制について説明させていただきます。

IPOを目指す会社に求められる会計制度

IPOを目指す前の会社がほとんど行っている会計処理は、税務申告を対応することを重視した税務会計処理(儲かっていないようにして、節税しようとする会計処理)が中心になっています。この会計処理は、会社の経営実態や実情から離れた会計処理をする場合があるというデメリットが存在します。

IPOをして、外部の投資家から活発に投資される上場会社になるためには、会社経営の実態・実情を現した財務諸表の情報発信をできる体制が必要になります。

IPOをするために求められる会計をざっくりまとめると、以下のようになります。

表 IPOを目指すとなると変わる主な会計処理や会計基準等

今まで IPOを目指すとなると
売上 2021年4月1日以降の事業年度から、新たな収益認識基準を適用
原価計算 実施不要 原価計算制度の導入が必須であり、一定以上の精度要
引当金 計上不要 貸倒・賞与・退職給付金等、会計基準にもとづき計上
在庫評価 最終仕入原価法 同一業種・業界で採用されている評価法を採用
人件費等の諸費用 現金主義でOK 発生主義を採用
固定資産 税法に基づく償却 各固定資産の経済的耐用年数をベースにした償却
研究開発費 資産計上し償却 全額費用計上処理
税効果会計 税務会計だったため、不要 採用しなければいけなくなる
減損会計 採用不要 投資額回収見込みが立たなくなった固定資産を減額
連結財務諸表 作成不要 連結子会社等があれば作成要
キャッシュフロー計算書 作成不要 作成要
管理会計 作成不要 「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等を考慮して作成

この中で最も労力を費やすのが、原価計算です。

原価計算は、経理部門担当者のマンパワーだけで対応できるものではなく、特にメーカーやIT、建設業等は、システム投資を余儀なくされるだけではなく、従業員に対して業務フロー変更や管理業務の追加を要請しなければいけなくなるような全社体制で挑む必要が出てきます。

さらに原価だけではなく、売上の計上方法も非常に複雑になる会計基準に対応が必要になります。

売上の計上方法については、こちらで説明しています。ご一読いただければ幸いです

「収益認識に関する会計基準の改正」をまとめました

会計管理体制の改善プロセス

IPOを目指す会計管理体制を構築するには、長い道のりが必要になります。

IPOを目指すためには、会計の管理体制をどのようなプロセスで改善しなければいけないかという記事をこちらでまとめています。ぜひご一読ください。

IPO準備の始めかた

IPOを達成するためには、覚悟しなければいけない会計のこと

上場会社に相応しい会計管理体制を構築するためには、2つのことを覚悟しなければいけなくなります。

会計管理体制整備のコスト

IPOを目指すことを決めると同時に、会計のシステム投資について検討する必要性が出てきます。

さらに社内人材についても、社内人材の能力の底上げ期待だけでは時間がかかりすぎる場合が多いため、即戦力の人材を採用するケースが多々あります。

さらに外部コンサルへ業務委託することも多くなり、会計管理体制整備に向けたコストを覚悟しなければいけなくなります。

多額の損失計上

減損会計の採用や、在庫や金融商品の価値評価の変更などに伴い、多額の損失計上が必要となる場合があります。

こちらで参考事例を説明しています。ぜひご一読ください。

【棚卸資産を多く抱える会社】グッドスピード【IPO事例】

多額の損失を計上せざるを得なくなった場合、銀行との関係にリスクが発生することに留意が必要になります。

IPOAtoZは、会計管理体制の整備に関する情報を発信しています

IPO AtoZでは、会計に関する参考事例や基本的な用語などの情報を掲載しています。

IPO AtoZの使い方
  1. 【参考事例】:Ⅰの部や有価証券届出書の記載内容から会計に関して述べたブログ 会計管理組織体制の整備
  2. 【最新情報】:会計制度に関する最新情報 IPO最新情報
  3. 【用語集】:IPOに接すると初めて知るような会計の基礎的な用語集 財務・会計・監査用語

会計管理体制整備に関するおススメ本

IPOAtoZの中の人がおススメする本を取り上げさせていただきます。

ちなみに某証券会社の公開引受部のオフィスにもある本です。

図解でスッキリ 収益認識の会計入門(EY新日本有限責任監査法人)

管理会計(同文舘出版)

会計監査六法(日本公認会計士協会出版局)

経理規程ハンドブック(中央経済社)