役員報酬の総額は、Ⅰの部の記載項目であり、また事業報告にも記載が求められます。

また1億円以上の報酬を支給されている役員が存在する場合、その人の報酬金額と氏名の記載を求められます。

さらに、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で決定することが義務づけられ、開示することになりました。

IPOAtoZでは、Ⅰの部の内容について、データベース化しておりまして、その中に役員報酬に関するデータも蓄積しております。

ここでは、そのデータベースを活用し、東証へ上場を達成した会社の役員報酬について、いくつかをランキング形式で紹介させていただきます。

役員報酬枠ランキング

取締役の報酬は会社法第361条、監査役の報酬は会社法第387条において、株主総会の決議で定めることになっています。

しかし役員の報酬を、毎年いちいち株主総会で決議する会社は、極めてレアだと思います。

一般的には、これらの報酬の上限(以下では「報酬枠」といいます)を株主総会で決議し、取締役会ではその範囲内で具体的な報酬額を定めることがほとんどです。役員の報酬枠については、Ⅰの部だけではなく、上場後の事業報告や有価証券報告書に記載を求められる可能性が高いため、会社の規模や業績状況に相応しい金額の設定が重要になります。

そこで、まず役員報酬枠は、どの水準になっているのかを調べてみました。

このブログを作成した段階では、2019年1月以降、197社が東証へIPOしておりまして、その内、121社が役員報酬枠をⅠの部に記載しています。

その121社についての内容をまとめております。

取締役の報酬枠ランキング

121社の役員報酬枠を上位、下位のランキングは、次のようになりました(非金銭報酬を含みます)。

表1 取締役報酬枠トップ5とボトム5

取締役報酬枠トップ5 取締役報酬枠ボトム5
ブシロード(1,600百万円) グッドパッチ(60百万円)
ヤプリ(1,500百万円) Branding Engineer(60百万円)
フォーラムエンジニアリング(1,000百万円) Sun Asterisk(60百万円)
ビーイングホールディングス(600百万円) ココナラ(65百万円)
ローランド他11社(500百万円) Appier Group(70百万円)

取締役の報酬枠の平均:263百万円

取締役の報酬枠の中央値:200百万円

監査役・監査等委員報酬枠ランキング

役員報酬枠の決議を求められるのは、取締役だけではありません。

表2は、監査役と監査等委員の報酬枠についてまとめました。

表2 監査役・監査等委員報酬枠トップ5とボトム2

監査役・監査等委員報酬枠トップ5 監査役・監査等委員報酬枠ボトム5
ヤプリ(150百万円) Sharing Innovations他4社(10百万円)
ヴィス他5社(100百万円)

監査役・監査等委員報酬枠の平均:35百万円

監査役・監査等委員の報酬枠の中央値:30百万円

役員報酬枠と会社規模との比較

大規模の会社ほど、役員報酬枠は多額になると仮定し、調べることにしました。

下のグラフは、取締役の報酬枠と資産合計額の関係を現したグラフです。

資産規模と取締役の報酬枠には、あまり相関性を感じられませんでした。

このブログ記事では、取締役報酬枠と資産合計額の相関関係だけを紹介させていただきますが、IPOAtoZではその他のファクター、例えば売上や利益との相関関係を紹介させていただくことが可能です。

株主

役員報酬ランキング

2019年1月以降~このブログ作成までにIPOを達成した会社(197社)の役員報酬の状況について、以下のようにまとめました。

役員報酬1億円以上ランキング

1億円以上の役員報酬の支給を受けている役員が存在する場合、開示する必要があります。

2019年1月以降~このブログ作成までにIPOを達成した会社の中で次の5名が1億円以上の報酬を得ています。

表3 役員報酬1億円以上の役員一覧(2019年1月以降~このブログ作成までにIPOを達成した会社)

会社 氏名 報酬額
1 コプロ・ホールディングス 清川甲介取締役 固定報酬:202,300千円
2 STIフードホールディングス 十見 裕取締役 固定報酬:156,000千円
3 ポピンズホールディングス 中村紀子取締役 固定報酬:132,000千円
4 カクヤスグループ 佐藤順一取締役 固定報酬:120,000千円
5 フリー 東後澄人取締役 固定報酬:15,240千円 ストックオプション 96,158千円

ブログの中の人の経験では、業績が不振な企業、また補助金収入に支えられている企業の役員報酬が高額である場合、IPO審査で問題になりました。

フリー社の業績は赤字ですが、ストックオプションの報酬額が大きいため、IPO審査で大きな問題にならなかったのではないかと思料しています。

取締役報酬額ランキング

取締役(社外取締役除く)の報酬額の上位と下位のランキングを次のようにまとめました(なお、非金銭報酬を含みます)。

表4 取締役(社外取締役除く)報酬トップ5とボトム5

取締役報酬トップ5 取締役報酬ボトム5
SANEI(299,190千円 7名) WDBココ(14,984千円 4名)
コプロ・ホールディングス(256,417千円 6名) QDレーザ(17,313千円 2名)
ユーピーアール(249,717千円 6名) スペースマーケット(17,400千円  3名)
ダイコー通産(239,167千円 8名) グッドパッチ(18,000千円 2名)
フォーラムエンジニアリング(236,104千円 8名) モダリス(18,000千円 1名)

取締役(社外取締役除く)の報酬の平均:77,569千円

取締役(社外取締役除く)の報酬の中央値:64,644千円

当たり前ですが、取締役の員数に大きく左右されました。例えば、取締役報酬ボトム5位のモダリスの場合は、社長以外は社外取締役になっています。

役員(いわゆる社内取締役除く)報酬総額ランキング

監査役や監査等委員である取締役、また社外取締役の報酬総額をまとめました。

この役員報酬とは、IPOを目指すために必要となった役員報酬とも捉えることができると考えられます。

表5 役員(いわゆる社内取締役除く)報酬総額トップ5とボトム5

役員(いわゆる社内取締役除く)報酬トップ5 役員(いわゆる社内取締役除く)報酬ボトム5
ローランド(42,000千円) Link-U(2,280千円)
2 SANEI(36,000千円) Sharing Innovations(2,700千円)
3 カクヤス(32,000千円) インフォネット(2,900千円)
4 ビーイングホールディングス(30,000千円) フィードフォース(2,970千円)
5 フォーラムエンジニアリング(29,208千円) ステムリム(3,050千円)

役員(いわゆる社内取締役除く)報酬総額の平均:12,258千円

役員(いわゆる社内取締役除く)報酬総額の中央値:10,650千円

トップ5とボトム5には大きな開きがあることがわかります。

東証1部または2部にIPOした会社は、高額になる傾向にありました。

無償を含め、極めて安価な社外役員報酬の事例がありますが、IPO審査の観点では、無償を含めて報酬が安価な社外役員が存在している場合、社外役員としての業務を全うしてくれるのかどうかの疑義が生じる事になります。

なお、表5のボトム5に取り上げた5社は、上場後の役員報酬が大幅に上昇しています。

役員報酬総額ランキング

取締役、監査役等、全ての役員報酬を合計した総額をランキングしました。

表6 役員報酬総額トップ5とボトム5

役員報酬トップ5 役員報酬ボトム5
SANEI(335,190千円) スペースマーケット(21,900千円)
ユーピーアール(273,097千円) ココペリ(23,240千円)
3 コプロ・ホールディングス(267,997千円) QDレーザ(24,108千円)
4 フォーラムエンジニアリング(265,312千円) AI CROSS(24,418千円)
5 カクヤス(253,000千円) クリーマ(24,445千円)

役員報酬総額の平均:91,812千円

役員報酬総額の中央値:78,480千円

IPOAtoZの無料サービス

IPO審査で「役員報酬は、なぜ〇〇円にしたのですか?」と意地悪な質問がされると、どう回答しますか?

業績や会社規模に不釣り合いな高額な役員報酬額である会社は、株主から非難されます。また、IPO審査においても良い印象を受けません。

そのような質問を回答するにあたって「うちの会社にとって妥当な役員報酬の水準は、どの程度なの?」と悩む経営者がいらっしゃるのではないでしょうか?

IPOAtoZでは、そのようなお悩みに関して、IPOを目指す非上場会社限定で、無料でお手伝いしたいと考えています。

例えば、図2は、Y軸は役員報酬であり、X軸は利益で表したグラフです。

図2 役員報酬と利益の関係(2019年以降に東証へIPOを達成した会社)

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