有価証券届出書と目論見書には、「手取金の使途」という項目があります。

これは、投資家から獲得した資金をどのように使おうとしているのかを開示するための項目です。

「手取金の使途」の「記載上の注意」

企業内容等開示ガイドラインには、「手取金の使途」の内容について、次のような審査があると定められています。

手取金の使途について、手取金使途の区分ごとの内容、金額及び支出予定時期について、実態に即した記載となっているかという観点から、記載内容を審査する。
(注) 「実態に即した記載」の審査に当たっては、必要に応じ、使途の内容に対応する事業計画、資金繰り、資金調達を行う理由等(資料を含む)を確認し、また、新株予約権の場合、権利行使の可能性や時期等との関係に留意し、開示書類に記載された使途の内容の整合性等に着目することが考えられる。

(資料の例)
・資金繰り表
・事業計画書
・返済計画表(使途が借入金等の返済の場合)
・各借入先別の月次返済計画を示す資料
また、提出者が割当予定先の紹介、あっせん等を行った第三者に支払う手数料等の対価であっても、例えば、払込金額の総額に対する手数料の割合が著しく高い等、その態様に応じ、手取金の使途として記載する必要があると考えられる。

(出所:企業内容等開示ガイドラインより抜粋)

つまり手取金の使途の記載内容については、資金繰り表や事業計画書等との整合性が必要となり、審査対象になっています。

手取金の使途ランキング

そこで、2019年に東証へIPOを達成した会社(82社)の「手取金の使途」のTOP5と記載事例を以下にまとめました。

第1位 人材採用・人件費・教育投資(47社 57.3%)
  • gooddaysホールディングス株式会社
    ITセグメントにおける研究開発(goodroomプラットフォームの開発)に係る費用等として、216,000千円(平成32年3月期:72,000千円、平成33年3月期:144,000千円)(株式会社フロンティアインターナショナルⅠの部より引用)
  • トビラシステムズ株式会社

    技術部人員の人材確保にかかる採用費として24,290千円(2019年10月期:6,120千円、2020年10月期:7,130千円、2021年10月期:11,040千円)

第2位 機関システム等のIT投資(44社 53.7%)
  • 株式会社ランディックス
    上記の手取概算額604,000千円については、「sumuzu」サービス基盤拡張のためのシステム開発に対し117,761千円(2020年3月期28,598千円、2021年3月期42,458千円、2022年3月期46,706千円)(株式会社ランディックスⅠの部より引用)
  • 株式会社ウィルズ

    上記の手取概算額73,720千円については、プレミアム優待倶楽部、及びIR-naviのシステム開発資金の一部に充当する予定であります。(株式会社ウィルズⅠの部より引用)

第3位 オフィス増床・建屋新設・新店舗展開等の不動産関連投資(37社 45.1%)
  • SREホールディングス株式会社
    IoT環境を備えたスマートホーム「AIFLAT(アイフラット)」を提供するための物件取得費用に係る短期借入金の返済や営業用不動産の取得費用として1,900,000千円(2020年3月期:1,900,000千円)(SREホールディングス株式会社Ⅰの部より引用)
  • ダブルエー株式会社

    新規出店に伴う固定資産等の取得、敷金及び保証金、人件費及び人材採用費の一部として1,980,000千円(2021年1月期660,000千円、2022年1月期660,000千円、2023年1月期660,000千円)を充当する予定です。なお、1,980,000千円の内、設備投資に1,440,000千円、人件費及び人材採用費に540,000千円を充当する予定です。(ダブルエー株式会社Ⅰの部より引用)

同数第4位 研究開発・新事業・新商品・新サービス投資(26社 31.7%)
  • gooddaysホールディングス株式会社
    ITセグメントにおける研究開発(goodroomプラットフォームの開発)に係る費用等として、216,000千円(平成32年3月期:72,000千円、平成33年3月期:144,000千円)(株式会社フロンティアインターナショナルⅠの部より引用)
  • フリー株式会社

    製品開発に係るエンジニアの人件費等の研究開発費として、3,500百万円(2020年6月期:500百万円、2021年6月期:1,500百万円、2022年6月期:1,500百万円)(フリー株式会社Ⅰの部より引用)

同数第4位 広告宣伝投資(26社 31.7%)
  • ユナイトアンドグロウ株式会社
    当社グループの認知度向上及び事業の拡大のための広告宣伝費として78,000千円(2020年12月期:21,300千円、2021年12月期:28,300千円、2022年12月期:28,400千円)(ユナイトアンドグロウ株式会社Ⅰの部より引用)
  • 株式会社メドレー

    医療プラットフォーム事業における広告費及び販促費の増加分として161百万円(2019年12月期に2百万円、2020年12月期に159百万円)(株式会社メドレーⅠの部より引用)