東証マザーズへ上場するためには、高い成長可能性を求めています。
そこで高い成長性は、どの程度の成長性になるのかの目安を、2019年と2020年に東証マザーズへIPOした会社の事例から検証してみました。
なお以下のデータにつきましては、IPOAtoZの中の人が誠心誠意、心を込めて、一心不乱に、頑張ってまとめたものですが、その完全性、正確性、適用性、有用性等に関し、いかなる責任も負わないことをご了解くださいますようお願いします。
今回は、情報通信業編です。
2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業一覧
2019年と2020年に東証マザーズへ上場した会社の内、情報通信業は、58社ありました。
リックソフト株式会社、株式会社スマレジ、株式会社サーバーワークス、株式会社カオナビ、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド、gooddaysホールディングス株式会社、株式会社Welby、株式会社東名、株式会社ヴィッツ、トビラシステムズ株式会社、バルテス株式会社、Sansan株式会社、株式会社インフォネット、リビン・テクノロジーズ株式会社、株式会社Link-U、Chatwork株式会社、株式会社ギフティ、株式会社パワーソリューションズ、HENNGE株式会社、AI CROSS株式会社、BASE株式会社、フリー株式会社、株式会社マクアケ、株式会社メドレー、株式会社ウィルズ、株式会社JMDC、ランサーズ株式会社、株式会社JTOWER、ユナイトアンドグロウ株式会社、株式会社スペースマーケット、AI inside 株式会社、株式会社ビザスク、株式会社サイバーセキュリティクラウド、株式会社ロコガイド、フィーチャ株式会社、株式会社コマースOneホールディングス、株式会社アイキューブドシステムズ、GMOフィナンシャルゲート株式会社、日本情報クリエイト株式会社、株式会社Sun Asterisk、ティアンドエス株式会社、ニューラルポケット株式会社、株式会社インターファクトリー、トヨクモ株式会社、rakumo株式会社、株式会社ヘッドウォータース、株式会社アクシス、日通システム株式会社、株式会社カラダノート、アララ株式会社、株式会社クリーマ、株式会社スタメン、かっこ株式会社、株式会社プレイド、ビートレンド株式会社、株式会社ココペリ、株式会社Kaizen Platform、株式会社ヤプリ
(IPO AtoZ調べ)
売上ランキング
2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長については、平均で次のようになっています。
表1 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長平均
売上成長率(直前々期VS直前期)※ | 売上成長率(直前期VS申請期見込)※ | 売上成長額(直前々期VS直前期)※ | 売上成長額(直前期VS申請期見込)※ | |
---|---|---|---|---|
平均 | 60.9% | 37.8% | 619百万円 | 560百万円 |
※売上成長率(直前々期VS直前期):直前期の売上額が直前々期の売上額と比較して、伸長した比率
※売上成長率(直前期VS申請期見込):申請期の売上見込額が直前期の売上額と比較して、伸長した比率
※売上成長額(直前々期VS直前期):直前期の売上額と直前々期の売上額の差額
※売上成長額(直前期VS申請期見込):申請期の売上見込額と直前期の売上額の差額
- 直前期が減収になった事例は、ありました。
- 申請期の売上見込額が直前々期または直前期の売上額を下回る事例は、ありませんでした。つまりどの会社も、申請期の売上額見込が最高でした。
表2 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上高の傾向
売上高の傾向 | 社数 |
---|---|
直前々期 < 直前期 < 申請期見込 | 56社 |
直前期 < 直前々期 < 申請期見込 | 2社 |
58社中56社の売上は、右肩上がりでした。
高成長銘柄Top5
2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長についてのトップ5を次のような表でまとめました。
表3 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長トップ5
売上成長率(直前々期VS直前期) | 売上成長率(直前期VS申請期見込) | 売上成長額(直前々期VS直前期) | 売上成長額(直前期VS申請期見込) | |
---|---|---|---|---|
Top1 | ニューラルポケット(418%) | AI inside (200%) | JMDC(7,042) | Sansan(2,745) |
Top2 | スタメン(250%) | ニューラルポケット(149%) | Sansan(2,485) | フリー(2,425) |
Top3 | JMDC(233%) | ココペリ(115%) | SunAsterisk(2,311) | メドレー(1,744) |
Top4 | ビザスク(132%) | JTOWER(77%) | フリー(2,102) | サーバーワークス(1,377) |
Top5 | リックソフト(126%) | Link-U(75%) | 東名(1,970) | BASE(1,318) |
低成長銘柄Bottom5
2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長についてのボトム5(直前々期~申請期までの間の決算数字で大きな成長を見せることができなかった会社)を次のような表でまとめました。
表4 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長ボトム5
売上成長率(直前々期VS直前期) | 売上成長率(直前期VS申請期見込) | 売上成長額(直前々期VS直前期) | 売上成長額(直前期VS申請期見込) | |
---|---|---|---|---|
Bottom1 | ミンカブ・ジ・インフォノイド(-11%) | リビン・テクノロジーズ(4%) | ミンカブ・ジ・インフォノイド(-175) | トビラシステムズ(60) |
Bottom2 | Link-U(-2%) | ティアンドエス(6%) | Link-U(-18) | かっこ(63) |
Bottom3 | アララ(1%) | ヘッドウォータース(6%) | アララ(15) | ヘッドウォータース(67) |
Bottom4 | かっこ(3%) | ヴィッツ(6%) | かっこ(25) | リビン・テクノロジーズ(86) |
Bottom5 | インフォネット(6%) | トビラシステムズ(7%) | インフォネット(43) | インフォネット(92) |
営業利益ランキング
2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の営業利益成長については、平均で次のようになっています。
表5 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の営業利益成長平均
営業利益成長額(直前々期VS直前期) | 営業利益成長額(直前期VS申請期見込) | |
---|---|---|
平均 | 46百万円 | 140百万円 |
営業利益成長額(直前々期VS直前期):直前期の営業利益額と直前々期の営業利益額の差額
営業利益成長額(直前期VS申請期見込):申請期の営業利益見込額と直前期の営業利益額の差額
- 直前期に赤字の会社は、12社ありました。
- 申請期の赤字見込みの会社は、7社ありました。
- 申請期の営業利益の見込が、直前期または申請期の営業利益より下回っている会社は、8社ありました。
表6 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の営業利益の傾向
営業利益の傾向 | 社数 |
---|---|
直前々期 < 直前期 < 申請期見込 | 41社 |
直前期 < 直前々期 < 申請期見込 | 9社 |
申請期見込 < 直前々期 < 直前期 | 3社 |
直前々期 < 申請期見込 < 直前期 | 1社 |
直前期 < 申請期見込 < 直前々期 | 3社 |
申請期見込 < 直前期 < 直前々期 | 1社 |
2020年12月17日に上場したプレイドは、年々赤字額が膨らんできています。
高成長銘柄Top5
営業利益成長額(直前々期VS直前期) | 営業利益成長額(直前期VS申請期見込) | |
---|---|---|
Top1 | JMDC(851) | Sansan(2,123) |
Top2 | フリー(571) | JMDC(478) |
Top3 | BASE(469) | AI inside(392) |
Top4 | クリーマ(414) | スペースマーケット(302) |
Top5 | ロコガイド(350) | ニューラルポケット(298) |
低成長銘柄Bottom5
営業利益成長額(直前々期VS直前期) | 営業利益成長額(直前期VS申請期見込) | |
---|---|---|
Bottom1 | Sansan(-2,283) | プレイド(-545) |
Bottom2 | ヤプリ(-627) | ランサーズ(-308) |
Bottom3 | プレイド(-334) | HENNGE(-49) |
Bottom4 | メドレー(-130) | フリー(-46) |
Bottom5 | スペースマーケット(-121) | マクアケ(-30) |
まとめ
申請期の売上見込みが直前々期または直前期を下回った事例が無いことから、「高い成長可能性」とは、利益より売上の成長性を重視しているというのは間違いありません。
つまりマザーズへの上場に関しては、無理にマーケティング費用や研究開発費等、費用経費を削減することで、利益確保をしようとする行為は、全く意味がないということも言えます。
「表1 2019年と2020年に東証マザーズへ上場した情報通信業の売上成長平均」に近い売上高の成長をしている会社であれば、決算内容で「高い成長可能性」を説明できるのではと考えます。
しかし売上成長率が10%未満の会社、または直前期が減収に終わった会社等、高成長しているとは言いずらい会社が、マザーズへIPOを達成した事例がありました。