4月7日に、東証は「コーポレートガバナンス・コード」の改訂案を公表しました。
東証の「コーポレートガバナンス・コード」の改訂案サイトは、こちらにあります。またその内容は、こちらで説明しています。
コーポレートガバナンス・コードには、「多様性」という単語が乱発しており、取締役会も多様性が要請されておりまして、それは主に原則4-11で定められています。
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。
2019年1月以降~このブログ作成時点の間にIPOを達成した企業197社について、取締役会の多様性について調べてみましたので、ご紹介させていただきます。
ジェンダーの多様性
東証は、女性活躍推進を後押ししておりまして、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定しているくらいです。
表1に女性役員をどれだけ登用しているかを調べてみました。
表1 女性役員に関するまとめ(2019年1月以降~このブログ作成時点の間にIPOを達成した企業197社)
調査結果 | |
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男性役員数 : 女性役員数 | 1,570名(92.5%): 126名(7.4%) |
役員が男性のみの会社数 : 女性の役員が存在する会社数 | 113社(57.3%) : 84社(42.6%) |
複数の女性役員が存在する会社数 | 34社(17.2%) |
最も女性役員数が多い会社 | 株式会社浜木綿 4名(他男性9名) |
最も女性役員の割合が多い会社 | 株式会社AI CROSS (全役員数7名中、3名が女性役員) |
内閣府男女共同参画局の女性役員情報サイトによりますと、2020年7月時点での上場企業における女性役員の状況は、全役員の内、女性は6.2%のようであり、52%の上場企業には女性役員が存在しないようです。
社外役員の選任による多様性
社外役員の員数については、主に次のようなルールが存在します。
- 監査役会設置会社:半数以上を社外監査役
- プライム市場上場会社:独立社外取締役を1/3以上
- グロース市場上場会社、スタンダード市場上場会社:独立社外取締役を2名以上
- 支配株主を有する上場会社(プライム市場):過半数が独立社外取締役
- 支配株主を有する上場会社(グロース市場、スタンダード市場):3分の1以上が独立社外取締役
政府や東証は、企業のガバナンス向上を目的とし、社外役員の比率をどんどん増やせという旗を振っています。
そこで社外役員の員数について調べてみました。
社外取締役の員数
社外取締役(監査等委員の社外取締役を除きます)の員数について調べた結果、表2のようになりました。
表2 社外取締役(監査等委員の社外取締役を除きます)の員数に関するまとめ
調査結果 | |
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社内取締役の員数 : 社外取締役の員数 | 825名(77.3%) : 242名(22.6%) |
社内取締役の員数 : 社外取締役の員数(監査役会設置会社) | 656名(74.4%) : 225名(25.5%) |
社内取締役の員数 : 社外取締役の員数(監査等委員設置会社) | 169名(90.8%) : 17名(9.1%) |
社外取締役の最大員数 | 4名(ダイレクトマーケティングミックス、ローランド) |
社外取締役の最小員数 | 0名(全て監査等委員設置会社です) |
監査役会設置会社の場合、平均すると、取締役会は、4名の社内取締役に対し、1名の社外取締役で構成するという事になっているようです。
社外監査役の員数
社外監査役、また監査等委員の社外取締役の員数について調べた結果、次のようになりました。
表3 社外監査役、また監査等委員の社外取締役の員数に関するまとめ
調査結果 | |
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社内監査役・監査等委員の員数 : 社外監査役・監査等委員の員数 | 72名(11.6%) : 546名(88.3%) |
社内監査役の員数 : 社外監査役の員数(監査役設置会社) | 55名(11.1%) : 438名(88.8%) |
社内監査等委員の員数 : 社外監査等委員の員数(監査等委員設置会社) | 17名(13.6%) : 108名(86.4%) |
社外監査役・監査等委員の最大員数 | 5名(Kids Smile Holdings) |
社外監査役・監査等委員の最小員数 | 2名 |
また、ブログの中の人が驚いたのは、197社中、半数を超える104社が監査役会または監査等委員が社外役員だけで占められていたという事です。
以前は、特に常勤監査役は、社員の中から選任されていた事が一般的でしたが、今は社外の人が常勤監査役になることが主流になっているようです。
社外役員の員数
社外役員(社外取締役+社外監査役)の員数について調べた結果、次のようになりました。
表4 社外役員の員数に関するまとめ
調査結果 | |
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社内役員の員数 : 社外役員の員数 | 897名(53.2%) : 788名(46.7%) |
社内役員の員数 : 社外役員の員数(監査役設置会社) | 711名(51.7%) : 663名(48.2%) |
社内役員の員数 : 社外役員の員数(監査等委員設置会社) | 186名(59.8%) : 125名(40.1%) |
社外役員の最大員数 | 7名(ローランド、ダイレクトマーケティングミックス) |
社外役員の最小員数 | 3名 |
また、調査をした197社中、過半数の104社が監査役会または監査等委員が社外役員だけで占められていたという事です。
社外役員の知識・経験の多様性
コーポレートガバナンス・コードでは、知識・経験・能力の多様性を求めています。
そこで、2019年1月以降~このブログ作成時点の間にIPOを達成した企業197社の社外役員の知識や経験について調査し、表5にまとめました。
なお、表3や表4の数字と異なります。この主な理由は、複数の資格(例えば会計士と弁護士)を持つ社外役員が存在する場合、両方へカウントしているからです。また事業会社での経験を買われた会計士については、事業会社と会計士の両方へカウントしています。
表5 社外役員の経験状況
知識や経験 | 人数 |
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事業会社における経験 | 428名(55.5%) |
公認会計士または税理士としての会計知識 | 185名(24.0%) |
弁護士・司法書士・行政書士としての法務知識 | 137名(17.7%) |
学者または公務員の経験 | 15名(1.9%) |
社労士としての労務管理知識 | 5名(0.6%) |
社外役員の選定をするにあたっては、事業会社での経験を期待して選定する事例が過半数になっています。