毎年、上場する会社はある一方、上場を廃止する会社もあります。

上場を企業成長の大きなドライバーとして利用できた会社があれば、その反対もあります。

IPOの準備は、IPOのデメリットを理解した上で、そのデメリットの質・量を超えるメリットがあると判断してから、開始する必要があります。

IPOを目指すべき会社
IPOのメリットの大きさ > IPOのデメリットの大きさ  が成り立つ会社

IPOのメリット

IPOを成し遂げると、会社・創業者・従業員それぞれにメリットが発生します。

表1 IPOのメリット

メリット例
【会社】

企業成長の加速期待

  • 資金調達が多様化する
  • 知名度や信用力が向上する
  • 内部管理体制が充実する
  • 優秀な人材確保が期待できる
  • M&Aを行いやすくなるなど
【創業者】

創業者利潤の獲得

  • キャピタルゲインが期待できる
  • 個人保証が解消できる
  • 相続対策の円滑化が期待できるなど
【従業員】

社会的地位の向上

  • 個人的な信用力が上がり、特に住宅ローン借入時に有利になる
  • ストックオプション従業員持株会によってキャピタルゲインを期待できる
  • 会社の経営状況が透明化されるため、会社に対する安心感が増すなど

例えば、非上場会社が増資をしようとすれば、経営者が投資家や事業会社を探し回らなければいけませんが、上場会社になれば、証券会社が投資家へ営業してくれるようになります。

会社の運転資金の銀行借入をする際、銀行は経営者に対して個人保証を求めるケースがほとんどですが、上場を達成すれば、個人保証を求めることが減ることが期待できるようになります。

例えば、ブログの中の人は、上場会社に勤めていた時に、マンションを購入しましたが、非上場会社に勤めていたご近所の方と同じ銀行から住宅ローンを借りていたにも関わらず、金利が明らかに異なっていたことを覚えています。

IPOのデメリット

IPOには、「金銭コスト」「人的コスト」「心理コスト」の3つのコストが発生します。

ブログの中の人の経験で最も大きいと考えるコストは、管理部門の人材補強に関するコストです。

IPOを断念した場合、IPOを目指すために採用した人材は、急に過剰人員に変化してしまいます。

表2 IPOのデメリット

デメリット例
金銭コスト
  • 監査法人、主幹事証券会社、信託銀行などに支払う費用が発生する
  • 管理部門の人員増強が必要になるため、人材採用及び人件費のコストが増加する
  • 社外役員の招聘が必要になるため、役員報酬が増加する
  • 株主総会対応や証券取引所への手数料等、株式実務のコストが発生するなど
人的コスト
  • IR体制の確保と維持が必要になる
  • 適時開示体制の充実と維持が必要になる
  • インサイダー取引管理体制の充実が必要になる
  • 内部統制や財務会計への対応が必要になる
  • 内部監査体制を含む社内の牽制機能が必要になるなど
心理コスト
  • 株主から中長期的な利益より、短期的な収益確保を求められる
  • 株主から自己株式取得や配当支払いを迫られる
  • 買収リスクや、意図しない株主が現れる可能性が出る
  • 不祥事が発生すると、社会的制裁が大きくなりやすくなるなど

IPOの金銭コストに関しては、こちらに詳しく書いていますので、ぜひご参考ください。

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