株式公開の審査の難易度や焦点は、時によって変化します。

上場を達成するに至る水準には、”やさしくなったり、難しくなったりする”、または、”あまり重要視されなかった内容が重要視される内容変化する”といった「振り子現象」が存在します。

つまり、直前々期や上場準備をスタートした時点では問題なかった内容が、直前期末になって急に問題視されて、IPOの時期を延期、さらにはIPO準備の中断ということもしばしばあります。

このようにトレンドが変化する要因は、主に4つ存在します。

なお、この記事はあくまでもブログの中の人の経験に基づき作成したものでありますが、正確性を保証するものではありません。

IPO直後の不祥事(上場の難易度が突然上がります)

IPO業界全体にとって、インパクトが極めて大きな事件と言えば、ライブドア事件やエフオーアイ事件が挙げられます。

これらの事件は、IPO業界にとって極めてインパクトが大きな事件になり、IPO業界が急に冬の時代を迎えることになりました。

エフオーアイ事件については、こちらでまとめています。

主幹事証券会社が日本初の損害賠償責任を負うことになる最高裁判決【エフオーアイ事件】

IPOして間もない上場会社に不祥事事があると、社会全体または投資家からIPO業界全体に対する信頼性が失墜してしまいます。

この二つの事件だけではなく、例えば株式会社〇ル〇プ〇(892〇)(今も上場会社なので、一応、〇を入れています)の不祥事もIPO業界に大きな負の影響を与えてしまいました。

これらのような不祥事が起きてしまうと、上場審査や上場準備サポート体制全体が一気に厳格化してしまうため、上場準備を行っている会社は、振り子にぶち当たってしまいます。

「業績好調な会社」そして「管理体制がバッチリな会社」と言えども、その上場準備途中でエフオーアイ事件のようなことが起こってしまうと、不祥事企業に全く関係ない会社でも、残念ながら、その影響をモロに受けてしまうというリスクがあります。

これは、運が非常に悪く、経営者にとって避けることができないと思われます。

大手上場会社の不祥事(IPO審査における確認項目が増加します)

特に有名大企業が不祥事を起こし、ニュースで大々的に取り上げられるような事があれば、IPO審査における確認項目に影響が出ます。

例えば、次のような不祥事です。

IPO審査に影響を与えるような事件
  • 「株式会社電通社員の過労死事件」 ⇒ 労務(セクハラ、パワハラ、勤務管理など)に関する審査が厳格化されます。
  • 「株式会社ベネッセコーポレーション個人情報流出事件」 ⇒ 個人情報管理に関する審査が厳格化されます。

ベネッセコーポレーション個人情報流出事件とは、大手通信教育業者の株式会社ベネッセコーポレーション(現ベネッセホールディングス)の業務委託先の従業員が約3,500万件の顧客情報を持ち出し、名簿業者に売却したという事件です。

IPO審査では、上場直後にベネッセと類似のような不祥事が起きないかどうかの確認が厳格化されるということになります。

また、最近不祥事というのかどうかわかりませんが、「ソフトバンクが楽天モバイルを不正競争防止法に基づく損害賠償を提訴」というニュースがありました。こちらにあります。

今後は、特に技術職の中途入社に関することがIPO審査で取り上げられるようになるかもしれません。

    大手上場会社の不祥事2(特定の業種業界だけ、上場の難易度が上がります)

    これは、どの会社にも影響が出るということではなく、特定の業種業界に対するIPO審査に影響をもたらすような不祥事です。

    例えば、次のようなことが考えられます。

    IPO審査に影響を与えるような事件
    • 「レオパレス21による施工不良問題」 ⇒ 不動産業に対するコンプライアンス遵守体制に関する審査が厳格化されます。
    • 「ペッパーランチ事件(ググれば出てきます)」 ⇒ 多店舗経営の飲食業の労務管理に対するチェック項目が増してきます。
    • 「新宿居酒屋アルバイト殺人事件(ググれば出てきます)」 ⇒ 深夜営業を行っている居酒屋の勤務管理に関するチェックが強化されます。

    IPO業界の裏側(ある会社にだけ、突然、上場の難易度が上がります)

    すでに述べた3つの要因は、企業の不祥事が原因で起きることですが、不祥事で起こる要因だけではありません。

    つまり、「〇〇という出来事があって、審査が厳しくなったんですよ~」という説明を外部から聞くことができますが、その説明を聞くことが出来ないという内容のものです。

    IPOを目指す会社にとっては、原因などが不明であり、その振り子にぶち当たっているという実感さえない状況にある場合もあります。

    これは極めて残酷でありますが、ブログの中の人は、何社か目撃・経験をしています。

    IPOを中断、もしくは延期した会社の中には、この振り子にぶち当たったために中断・延期したという会社があると思います。

    その答えは、↓にあります。

    上場の難易度【IPO業界のこわ~い裏側】【IPO事例-30】

    ご興味がおありの方は、↓のフォーマットで「IPO事例-30を教えてちょうだい!」と一言、付け加えてお問い合わせください。

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      IPOを目指す会社の対応策

      上場に至る難易度は、振り子のように変わることを紹介させていただきました。

      上の4つの振り子の中で、二つ目と三つ目については、次のような対応で対処可能な振り子であると考えられます。

      IPOを目指す会社の対応策案
      • 同業他社や大手企業の不祥事があれば、それを「他山の石」として捉え、同様の不祥事を起こさない対策を実施する。
      • 同業他社や大手企業の不祥事があれば、IPO審査項目になることを念頭においた想定Q&Aを準備する。
      • 同業他社や大手企業の不祥事があれば、その不祥事がIPO審査にどのような影響が出るのかを主幹事証券会社の担当者と情報入手する。

      IPOAtoZには、「IPO失敗事例」というカテゴリーがあります。そのカテゴリーには、不祥事とまでにはいかないような事例も紹介しています。こちらです。

      また、企業の不祥事だけではなく、「法制度の改正」や「社会問題」も振り子減少をもたらす要因として存在します。

      ぜひご参考ください。