
「現金主義」「発生主義」「実現主義」というのは、会計上「いつ、何によって取引が実現したか」を認識するための概念のことをいいます。
IPOを目指す場合、「現金主義」は、認められません。
現金主義とは
現金の入出金に基づいて費用と収益を認識する考え方です。
現金主義は、企業の経営実態を把握出来ない考え方であるため、IPOを目指す会社または上場会社は、一切採用できません。
ほとんどの会社は、起業時に現金主義を採用しておりまして、現金主義からの脱却がIPOに向けた第一歩です。
現金主義のメリットとデメリット
現金主義には、発生主義や実現主義と比較して、次のようなメリットやデメリットがあります。
- メリット:発生主義や実現主義に比べてシンプル、かつ会計上の不正が起きにくい
- デメリット:会社の経営実態を正確、かつタイムリーに財務諸表へ反映することが困難
現金主義の仕訳例
例えば、水道光熱費を現金主義として仕訳をしている場合このように行います。
- 現金主義の仕訳例
【 水道光熱費 100 / 現金 100 】
水道光熱費の支払を行った日のみに仕訳を行います。
非常に簡単ですが、実際に費用となるものに使った月や期と、費用計上を行う月や期がずれる可能性が極めて高くなります。
発生主義とは
金銭のやり取りに関係なく、取引が発生した事実に基づいて収益や費用を認識する考え方になります。
費用に採用する考え方です。
例えば、人件費ですが、実際に従業員が労働したタイミングで費用を発生させることを発生主義になります。
ちなみに給料を支払ったタイミングで費用を発生させると現金主義になります。
IPOを目指す会社で採用する方式は、もちろん発生主義になります。
発生主義のメリットとデメリット
- メリット:タイムリーに財務諸表へ反映できる
- デメリット:取引が発生した事実認識が最も曖昧であり、確実性が低い
発生主義の仕訳例
例えば、水道光熱費ですが、電力会社より請求書が届いた時点で
【水道光熱費 100 / 未払金 100】
水道光熱費を支払った時点で
【未払金 100 / 現金 100】
の2回仕訳を実施します。現金主義よりも面倒ですが、実際に費用をかけた月や期と、費用計上を行う月や期がずれる可能性が低くなります。
実現主義とは
収益を確定する時点を、役務等の提供によって、実際に代金やその他の等価物(手形等)を得たり、それらのものの獲得が確定した時点にする考え方になります。
主に次のような基準で売上を計上する原則になります。
- 出荷基準:商品の出荷で販売が実現したとする基準
- 検収基準:製品の据付やサービス提供を終え、顧客が承認・検収した時点で、販売が実現したとする基準
- 引渡基準:不動産賃貸借などにおいて、鍵を引き渡した時点で、販売が実現したとする基準
実現主義は、主に収益に採用する考え方になります。
実現主義を採用するには、何をもって実現したのかを明確にすることが求められており、書面等での証拠やエビデンスが重要になります。
費用面では、製造原価が実現主義として採用されることになります。
実現主義のメリットとデメリット
実現主義には、次のようなメリットやデメリットがあります。
- メリット:販売したモノの対価を受け取るという事実に基づいているため、発生主義よりも確実性が高い
- デメリット:各取引において「出荷基準」「検収基準」「納品基準」などの基準を明確化する必要がある
実現主義の仕訳例
例えば、商品の販売ですが、商品を納品した時点で
【売掛金 100 / 売上 100】
代金が入金された時点で
【現金 100 / 売掛金 100】
の2回仕訳を実施します。現金主義よりも面倒ですが、納品を行った月と売上計上を行う月や期がずれる可能性が低くなります。