不正会計により大変な状態のアジャイルメディア・ネットワークは、今どうなっているのかとホームページを見たところ、不勉強ながら、ブログの中の人にとって、初めて聞いた用語がありました。

「株主総会の継続会」

こちらになります。

ひょっとすれば、私以外のIPO周辺で働く方々にとりましても、あまり馴染みがない言葉だと思います。

しかしIPOAtoZをお読み頂くような方、特に総務部門の方々であれば、知っておいて損は無いと考えましたので、記事にしてみました。

ちなみに、アジャイルメディア・ネットワークに関する不正は、↓に記載しています。ご参考ください。

アジャイルメディア・ネットワークの不正会計の概要

会社法第317条と株主総会継続会

会社法第317条は、次のようになっています。

延期又は続行の決議

株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第298条(株主総会の招集の決定)及び第299条(株主総会の招集の通知)の規定は、適用しない。

株主総会は、何等かのトラブルや事情があり、審議が終わらない場合も想定できます。

そのような場合、「継続会」という形で継続審議を行うことで決議ができます。

会社法では、株主総会の継続会を開催する際、第298条(株主総会の招集の決定)と第299条(株主総会の招集の通知)で定められた株主総会の手続きを省略できると定められています。

これまでも継続会は、アジャイルメディア・ネットワークのようなケース、つまり不正会計をしてしまったために株主総会で計算書類の報告が出来なくなってしまったケースに行われているようです。

また、不正会計ではないケースでも、例えばSBIホールディングス株式会社のように、直近に行ったM&Aによる影響により、株主総会の継続会を開催する旨が発表されています。こちらになります。

株主総会の継続会の指針

会社法では、株主総会の継続会について、第317条に記載されているだけです。

そこで株主総会の継続会について、金融庁と法務省、経済産業省の3省庁が共同で指針を出しておりまして、この指針が参考材料になります。

こちらになります。

この指針は、コロナウィルスのまん延によって、株主総会の開催に大きな混乱を及ぼしてしまった会社を配慮して、3省庁が共同して「こんな制度があるよ」という紹介を指針という形で提案したようです。

この指針を読んだところ、次のようなところがポイントになっています。

継続会の決定

  • 当初の定時株主総会の時点で継続会の日時及び場所が確定できない場合、これらの事項について議長に一任する決議も許容される。

⇒ 会社法上の解釈では、継続会の日時や場所の決定は、当初の定時株主総会の決議で決定されるとなっています。しかし、実務的にそのような事は困難なケースが多いことから、議長の一任で継続会の日時と場所が決定できる考えを指針では示しています。

取締役及び監査役の選任

  • 任期が今期の定時株主総会の終結の時までとされている取締役及び監査役について、当初の定時株主総会の時点において改選する必要があるときは、当初の定時株主総会時点をもって、その効力を生ずる旨を明らかにすることが考えられる。

⇒ ほとんどの会社の取締役会等の任期は、「定時株主総会の終結時点まで」に設定されています。そこで、定時株主総会の継続会を開催することになった場合、「当初の定時株主総会までが任期なの?」または「継続会までが任期なの?」と迷います。この指針では、「継続会時点ではなく、当初の定時株主総会までが任期ですよって、明らかにして、取締役等の選任決議を行いましょう」と述べています。

剰余金の配当

  • 当初の定時株主総会において剰余金の配当決議を行う場合、当該行為の効力発生日が 2020 年 3 月期の計算書類の確定前である限り、2019 年3月期の確定した計算書類に基づいて算出された分配可能額の範囲内において行うことができる。
  • この場合において、2020 年3月期の計算書類の確定はなされていないものの、決算数値から予想される分配可能額にも配意すること。

⇒ 剰余金の配当は、分配可能額の範囲内で行う必要があります。しかし、決算が確定していない場合、分配可能額はどうなるの?という疑問が出てきます。この指針では、前期の計算書類に基づいて算出された分配可能額をベースに使うことが出来るとなっていますが、これはあくまでもコロナという異例な事情があるための解釈のようであり、今後も同じ解釈を使えるかどうか、わかりません。

合理的期間

  • 当初の定時株主総会と継続会の間の期間については、許容される期間の範囲について画一的に解する必要は無い。
  • しかし、その間隔が余りに長期間となることは適切ではなく、3ヶ月を超えないことが一定の目安になる。

⇒継続会は、定時株主総会の終結後、いつまでに行わなければいけないのかという法律は、存在しません。そこでこの指針で「3カ月」という目安を作りました。しかし、あくまでも3カ月という目安は、コロナという事情を踏まえた指針でありまして、アジャイルメディア・ネットワークのような不祥事によって行われる継続会がこのまま適用して良いのかどうかわかりません。

事務遂行の在り方

本件に関する決算や監査業務の遂行は、当該業務に携わる者の安全と健康に十分に配慮しながら適切かつ合理的に遂行していくことが求められるところ、決算や監査実務の遂行に当たって書面への押印を求めるなどの慣行は見直されるべきである。

⇒現在、監査報告書へ監査役の押印は、義務付けされていませんが、慣行として、押印されているケースがほとんどのようです。この指針では、このような慣行を見直しましょうと述べています。

まとめ

「株主総会の継続会」について紹介させていただきました。

この中で金融庁と法務省、経済産業省の3省庁が共同で出した指針も紹介させていただきましたが、この指針は「コロナという事態を考慮すれば、法的解釈を多少曲げても、継続会に対し、一般世間は許してくれるんじゃないの?」というものであるようです。

一方、アジャイルメディア・ネットワークのような不祥事によって、株主総会の継続会を開催する場合は、この指針を鵜呑みにすることはリスクがあると考えますね。

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