ブログの中の人が上場準備会社の支援を行っている顧客先は、どの会社も反社会的勢力対応規程が整備されています。

しかし、その中のいくつかの会社の規程には、どこかの会社からひな型を手に入れたのかわかりませんが、「反市場勢力」に関する記述が入っていました。

これを見て、ブログの中の人は「う~ん」と思いました。

ちなみにブログの中の人が勤務していた某証券会社の規程の中には、反市場勢力の文言が書かれた条文等は存在しませんでした。

ブログの中の人は、上場を目指す会社に対し、規程整備のお手伝いをしていますが、反社会的勢力対応規程のひな型に反市場勢力という文言を入れておりません。

しかし、反市場勢力という用語が証券業界界隈に存在することは、しっかり認識しております。

ある日、私のことを反社会的勢力排除に関するエキスパートであると勘違いしている方から「反市場勢力」に関する問い合わせがありました。

実は、IPO AtoZには↓のようなブログ記事がありまして、この記事は、毎月安定して100回以上のアクセスがある一方、その副作用として一部の読者の方から、私のことを勘違いされてしまっています(私は、専門知識ゼロの単なるスケベ親父でございます)。

【完全版】IPO準備における反社会的勢力排除のための取り組み

そこで、ブログの中の人が考える反市場勢力について、記事にさせていただきます。

あくまでもブログの中の人の持論が満載されておりますので、内容を保証することは一切出来ません。

反市場勢力とは

上場準備会社にとりましての反社会的勢力の定義につきましては、日本証券業協会の「定款の施行に関する規則」第15条がベースになっています。

しかし一方、反市場勢力という定義は、定められておりません。

そこで、反市場勢力の定義についてググってみますと、

株式会社トクチョー様 「反市場勢力って市場で何をする?何が問題なの?その基本と用語を解説」(こちらになります)

ソーシャルワイヤー株式会社様「上場企業・IPO準備企業の陰に潜む反市場勢力とは? 基本と用語について解説」(こちらになります)

が出てきました。

どちらも反市場勢力の定義が「総会屋」「仕手筋」「不公正ファイナンス関連」となっています。

さらに株式会社Japan PI様が少しツッコんだ記事を書いています。「反市場勢力と半グレの意味とは?暴力団との違いを解説」(こちらになります。IPO AtoZでは、Japan PI様のように、特定個人に対して反市場勢力であると断定する勇気はございません。)

(以下、これらの3サイトを「専門サイト」といいます)

しかし、ブログの中の人の感覚では、総会屋や仕手筋などは反市場勢力ではなく、立派な反社会的勢力じゃないの?と思っています。

現に「定款の施行に関する規則」第15条5号に「総会屋等」7号「特殊知能暴力集団等」に入っておりまして、総会屋や仕手筋などが該当すると考えるからです。

さらに「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」の解釈によれば、どのような法律であれ、不法行為を繰り返しする団体個人という段階で、十分に反社会的勢力の範疇になるはずです。

上場準備関係者にとりましては、反社会的勢力に認定された個人・団体が反市場勢力なのかどうかを考える必要性は一切無いと考えています。

きっと、ブログの中の人が勤務していた証券会社でも同じ考えなのではと推察します。

そこで反社会的勢力に該当しないけど、反市場勢力になりそうなのはどんな団体個人なの?を考えることとします。

(以下で述べるのは、全て反社会的勢力に該当しない反市場勢力に限定した内容とさせていただきます)

ブログの中の人は、反市場勢力について、以下のような解釈をしています。

反市場勢力における「市場」とは

反社会的勢力とは、社会に反する勢力であり、反Colabo勢力であれば、Colaboに反する勢力になります。

つまり、反市場勢力とは、市場に反する勢力になるはずであり、反市場勢力の定義を考えるにあたっては、まず市場とは何?を考えることが起点になるはずです。

ブログの中の人は、東京証券取引所を中核とする日本取引所グループ様に関係する市場である事は間違いないと考えています。

少なくとも、豊洲市場や京都錦市場等、野菜や魚等を売る市場ではないはずです。

つまり、反市場勢力とは、日本取引所グループ様に反する勢力と解釈しています。

市場の定義の中にニューヨークやシカゴ、ロンドン等の海外市場、福岡や名古屋等の地方市場が含まれるかどうかわかりませんが、このブログ記事をお読みになる読者にとりましては、あまり深く考える必要はないと考えております。

反市場勢力の定義

日本取引所グループ様に反する勢力とは、つまり次のような事を行った個人・団体であると推察しています。

  • 日本取引所グループ様の顔に泥を塗った個人・団体
  • 日本取引所グループ様の理念や考え方に反抗した個人・団体
  • 日本取引所グループ様の品格を落とすような行為をした個人・団体
  • 日本取引所グループ様からの信用・信頼を裏切った個人・団体など

つまり簡単に言えば、ブログの中の人は「反市場勢力とは、日本取引所グループ様を困らせた個人・団体」と解釈しています。

となると、法律という側面だけではなく、道義的な側面を含めた非常にぼんやりとした範囲に拡大すると考えます。

ブログの中の人も証券会社勤務時代「えっ?あの会社が反市場勢力なの?」と驚いた経験もあります。

反市場勢力の例

上で紹介させていただいた専門サイトの中には、インサイダー取引をはじめとする金商法違反(旧証券取引法違反)をした人は反市場勢力として定義されているような解釈をされています。

そこで、1年以上前の記事ですが、こんな事件を考えてみることにします。

株式不正推奨でドンキ前社長が有罪判決を受ける

↑のブログで事件になったドンキホーテの元社長は、金商法違反で有罪になりましたが、はたしてこの方は反市場勢力になるでしょうか?

ブログの中の人の個人的な考えでは、この元社長は、罪を償い、一定期間が過ぎ、再犯可能性も無いようであれば、もはや反市場勢力に該当しないのではと考えています。また「うっかりインサイダー」等、不勉強または甘く見ていたために金商法違反をしてしまった人については反市場勢力と言えないのではと解釈しています。

少なくとも、これらの人々は、「日本取引所グループ様を困惑させた個人・団体」には該当しないと考えるからです。

無論、これらの人達が、今後も引き続き金商法違反をしようとするような個人・団体の場合、または他にも問題を起こしていた個人・団体の場合、話は別です。

一方、例えばIPOに関する反市場勢力とは、次のような会社が含まれると考えています。

① 子会社上場でのケース

例えば、子会社上場を目指すA社が上場しようとする場合、上場会社としての独立性が確保されているかどうかを確認されます。つまり上場審査では、A社の親会社B社は「A社は、B社グループから独立性を確保している」と東証へアピールする事になります。やがてA社は上場を達成したとします。

しかしその舌の根が乾かない内に、B社がA社株価が下がった所で上場廃止し、A社を完全子会社にしたとします。

こんな事をしてしまえば、東証は「証券市場を食い物にしやがって!」と当然怒り、東証によるA社とB社の評価信頼は、大きく低下すると考えられます。

上場承認を受けた会社は、東証の上場審査をクリアした会社、つまり東証のお墨付きを得た会社になります。

上場審査で語った事に対して、東証を裏切るような行為を行ってしまうと、東証が怒るのは当然です。

そうなるとA社とB社は、反市場勢力になってしまうはずです。

その後、B社グループの別の子会社を上場させようとしても、東証は「顔を洗って、出直してこい!」として拒否する可能性が高いはずです。

② 上場直後に大きな下方修正したケース

上場審査では、申請期の予算進捗と今後の見通しの審査を受けます。そこでは、間違いなく直近の見通しについて、あれこれ質疑応答があり、一定以上の業績見通し、または予算達成可能性が東証によって確認された会社のみが上場承認を受けることになります。

しかし上場した数日後、上場審査で語っていたような事とは180度異なり、上場審査時に明らかに把握していたであろう要因で業績下方修正を出してしまうと、個人投資家等から「何でこんなクソ会社を上場させたんだぁ!」と東証に怒りの声が飛び、IPO全般に対する信頼性がガタ落ちしてしまいます。

こんな会社、またこんな会社の経営者(特に社長)は、反市場勢力になってしまうはずです。

有価証券上場規程第 601 条第1項第 10 号には、上場審査において提出した書類に虚偽の記載があり、本来なら上場審査基準に適合していなかったことが明らかになった場合には、1年以内に新規上場審査に準じた上場適格性の審査に適合しなければ、上場廃止になる条文が存在します。

①も②も一般的感覚からすれば”虚偽”と見做される可能性がゼロとは言えないかもしれませんが、上場廃止を決定させるまでには至らないと思われます。しかし東証様に対し、既知の情報を虚偽または隠蔽することによって、東証様の顔に泥を塗った場合、ブログの中の人の定義では、反市場勢力確定です。

無論、それ以外、合法と言えども、その他東証様が考える倫理感から逸脱する行為を行った者、さらに法の網の目を抜けた取引等を行う事により有価証券市場を食い物にしたような人等は、半永久的に反市場勢力になるはずです。重ねて紹介させていただきますが、わかりやすい方を株式会社Japan PI様が「反市場勢力と半グレの意味とは?暴力団との違いを解説」(こちらになります。)におきまして、一部候補者が挙がっております。

さらに2023年1月4日にローンチしたこちらの記事に挙げられた会社またはその経営者の中で何社かは、今でも反市場勢力に該当しているのではと予想します。

IPOがなぜ難しいのか、上場準備がなぜ大変なのかという理由

自社が反市場勢力になってしまうとどうなるのか

重ねて申し上げますが、反市場勢力とは「日本取引所グループ様を困惑させた個人・団体」です。

さらに証券会社は、所詮日本取引所グループ様と対等な関係と言えません。

例えば、日本取引所グループ様がビートたけし様だったとすると、証券会社はダンカン様・つまみ枝豆様です(野村證券様だけは、所ジョージ様クラスです)。日本取引所グループ様がアントニオ猪木だったとすると、証券会社は所詮ストロング・マシーンの平田です。

ビートたけし様の顔に泥を塗った個人・団体とダンカン様・つまみ枝豆様が深いお付き合い出来るような事は絶対にありません。

つまり反市場勢力と見做された上場会社に対しては、証券会社(少なくとも国内5大証券会社)は、冷酷な扱いをするはずです。

このブログを書く前、反市場勢力の会社と思しき会社が上場後2度目のファイナンスを行うとプレスリリースしましたが、この会社は1回目も第三者割当増資であり、公募増資を行った事がありません。公募増資は、上場会社が出来る最大のメリットの一つですが、反市場勢力と見做されてしまうと、そのメリットを最大限に享受できなくなる可能性があるとお考え頂いてよろしいかと思います。

ブログの中の人は証券会社勤務時代「あの会社は、ハンシ(反市場勢力の略)だから、訪問しなくていい」と上司・営業に何度か言われた経験があります。

また、非上場の段階で反市場勢力と見做されるような会社は、そもそも主幹事証券会社は営業をかけてくるはずないため、IPO出来ないと思われます。

反市場勢力との取引と反社会的勢力との取引の違い

例えば、主たる取引先の中に反社会的勢力が存在する会社は、IPOが極めて困難になるはずです。

しかし一方、ブログの中の人の考えであれば、主たる取引先に反市場勢力の会社があったとしても、その取引内容や反市場勢力の事業内容等を考慮され、IPOには問題ないと考えられるケースが存在すると考えております。

また、株主の中に反市場勢力と見做される人が存在する場合も、役職や持株比率に応じて、対応が変わってくると思料します。

役員にいれば、ちょっと難しいかもです。

まとめると表1になります。

表1 上場準備における反社会的勢力と反市場勢力の扱いの違い

反社会的勢力 反市場勢力
主たる取引先に存在 × 取引内容や規模を考慮
役員に存在 × ×
株主に存在 × 持株比率を考慮

例えば、反社会的勢力が役員に存在したと判明した場合、主幹事証券会社は「Aさんは、反社会的勢力に該当するので、退任させてください」とは言いません。しかし反市場勢力が役員に存在したと判明した場合、主幹事証券会社は「Aさんは、反市場勢力に該当するので、退任させてください」とは言えるのではと思料します。

あくまでもブログの中の人が勝手に考える認識でありまして、実際には異なるかもしれません。

反市場勢力の調査方法

これは相当、難しいと思います。

反社チェックをするサービスは存在しますが、それらのサービスが反市場勢力まで十分にカバーできているかどうかわかりません。申し訳ありませんが、ブログの中の人もわかりません。

インサイダー取引をはじめとする金商法違反(旧証券取引法違反)については反社チェックサービスで網羅できそうですが、その他のファクターでの反市場勢力に関しては、あまりにも定義がボンヤリしています。

ひょっとすれば、証券会社や東証が保有する反社チェックシステムでなければ、反市場勢力をチェックできないのかもしれませんし、そのチェックシステムでも網羅できておらず、証券マンの記憶や感情等に左右されているかもしれません。

なお、ブログの中の人が他人から聞いたところ、四季報に主幹事証券・幹事証券が書かれていない会社があります。その一部に反市場勢力が存在するそうです(ブログの中の人の意見ではありません)。

まとめ

ブログの中の人が考える「反市場勢力」について紹介させていただきました。

この記事でブログの中の人が最も言いたい事は、「東証や主幹事証券会社に審査でウソや隠蔽をしてしまうと、あなたの会社自身が反市場勢力になってしまう」という事です。

きっと上場承認直前になれば、色々な誘因が出てくると思います。

そんな時は、ぜひ「東証に隠蔽や嘘をついてでもIPOする事に得られるメリット」と「反市場勢力として、見做されてしまったデメリット」を天秤にかけて、冷静にお考え頂ければと思います。

私の友人に元メディア・リンクスという過去稀に見る不良会社に勤務していた女性がいました。

その女性は、私に「履歴書へメディア・リンクスを書かなければ、経歴詐称になってしまうのか?」という質問がありました。

私は、うまく回答できませんでした(上から目線で申し訳ありませんが「はい。経歴詐称ですよ」という回答は最低だと思います)。

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