2021年のIPOは、活況に終わりました。

その総括の第一弾として、マザーズに上場達成会社の業績について、まとめてみました。

将来、マザーズ(グロース市場)への上場を目指す会社関係者の方々にとりまして、参考になれば幸甚です。

もし、「こんな風にまとめることはできないか??」「この指標のランキングを作成できないか??」というようなリクエストをいただければ、IPOAtoZでアップデートを考えておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

なお、以下のデータ等につきましては、正確性を保証するものではありません。

2021年マザーズ上場達成会社の売上高まとめ

2021年に東証マザーズへ上場達成した会社の売上高上位5位と下位5位を表1にまとめました。

表1 売上高TOP5とBOTTOM

TOP5(百万円) BOTTOM5(百万円)
直前々期 直前期 申請期予想 直前々期 直前期 申請期予想
1 21,492 ビジョナル 25,879 ビジョナル 26,700 ビジョナル 0 ステラファーマ 0 ステラファーマ 67 ペルセウスプロテオミクス
2 20,600 リニューアブル・ジャパン 22,276 リニューアブル・ジャパン 22,000 アールプランナー 34 サスメド 85 ペルセウスプロテオミクス 95 サスメド
3 16,635 アールプランナー 19,183 アールプランナー 15,394 リニューアブル・ジャパン 72 レナサイエンス 115 サスメド 122 レナサイエンス
4 12,961 セレンディップ・ホールディングス 15,196 セレンディップ・ホールディングス 14,584 日本電解 179 サイエンスアーツ 209 レナサイエンス 205 ステラファーマ
5 10,866 日本電解 12,480 日本電解 14,460 セレンディップ・ホールディングス 202 Green Earth Institute 222 サイエンスアーツ 365 サイエンスアーツ

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

表1から、マザーズへ上場するためには、直前期までの売上がゼロであったステラファーマでも上場を達成しており、申請期の売上が1億円に満たないような会社でも上場達成していることがわかります。

したがいまして、上場達成するための売上高の水準や基準等は、全く存在しないと考えて良さそうです。

なお、平均値と中央値は、表2のとおりになりました。

表2 売上高平均と中央値

平均値 中央値
直前々期売上高(百万円) 3,006 1,661
直前期売上高(百万円) 3,472 2,200
申請期売上高(百万円) 4,029 2,552

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

 2021年マザーズ上場達成会社の売上高成長率まとめ

2021年に東証マザーズへ上場達成した会社の売上高成長率上位5位と下位5位を表1にまとめました。

表3 売上高成長率TOP5とBOTTOM5

TOP5(%) BOTTOM5(%)
直前期 申請期 直前期 申請期
1 303.0 Sharing Innovations ステラファーマ ▲69.1 ペルセウスプロテオミクス ▲41.6 レナサイエンス
2 238.2 サスメド 116.9 WACUL ▲22.0 デコルテ・ホールディングス ▲30.9 リニューアブル・ジャパン
3 190.3 レナサイエンス 90.0 アイドマ・ホールディングス ▲21.3 QDレーザ ▲21.2 ジィ・シィ企画
4 157.9 セーフィー 84.3 coly ▲20.5 ラバブルマーケティンググループ ▲21.2 ペルセウスプロテオミクス
5 111.5 JDSC 83.8 プロジェクトカンパニー ▲17.7 ラストワンマイル ▲18.5 コンフィデンス

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

マザーズへ上場するためには、高い成長可能性を有している必要があります。

高い成長性を説明するためには、直前々期⇒直前期⇒申請期に至る売上高が伸び続けることが一般的に求められますが、表3から、業績が減収している会社でも、上場達成が出来る可能性があることがわかります。

なお、2社(CS-C社、ペルセウスプロテオミクス社)が直前期と申請期の2期連続で減収・減収計画を提出して、上場達成しています。

平均値と中央値につきましては、表4のとおりになりました。

表4 売上高成長率の平均と中央値

平均値 中央値
直前々期売上高成長率(%) 29.2 17.2
直前期売上成長率(%) 24.0 21.5

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

2021年マザーズ上場達成会社の予想PSRまとめ

上場企業の中でベンチャー企業の銘柄に関しては、PSR(Price to Sales Ratio)と呼ばれる指標を使って、割安または割高として評価されるケースが多々あります。

PSRとは、時価総額を売上高で割って算出されます。

発行価格をベースにした時価総額と申請期の予想売上高をベースにして算出したPSRの上位5位と下位5位を表5にまとめました。

表5 予想PSRのTOP5とBOTTOM5

TOP5 BOTTOM5
1 230.8倍 サスメド 0.1倍 アールプランナー
2 151.7倍 ペルセウスプロテオミクス 0.3倍 セレンディップ・ホールディングス
3 67.4倍 レナサイエンス 0.6倍 ラストワンマイル
4 61.8倍 ステラファーマ 0.6倍 メイホーホールディングス
5 23.7倍 Finatextホールディングス 0.6倍 アジアクエスト

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

予想PSRが100倍を超えるような発行価格もあれば、1倍を大きく割り込むような発行価格に設定したIPOも多くありました。

なお、予想PSRの平均値は10.6倍、中央値は3.3倍でした。

2021年マザーズ上場達成会社の営業利益まとめ

2021年に東証マザーズへ上場達成した会社の営業利益上位5位と下位5位を表1にまとめました。

表6 営業利益TOP5とBOTTOM5

TOP5(百万円) BOTTOM5(百万円)
直前々期 直前期 申請期予想 直前々期 直前期 申請期予想
1 1,419 アクシージア 2,186 ビジョナル 2,072 リニューアブル・ジャパン ▲1,912 Appier Group ▲1,578 Appier Group
2 1,167 ペイロール 1,673 リニューアブル・ジャパン 1,995 coly ▲1,038 ココナラ ▲1,028 Photosynth
3 1,061 AB&Company 1,430 プラスアルファ・コンサルティング 1,838 プラスアルファ・コンサルティング ▲976 QDレーザ ▲780 Finatextホールディングス
4 997 リニューアブル・ジャパン 1,136 ペイロール 1,504 AB&Company ▲861 ステラファーマ ▲780 サスメド
5 990 プラスアルファ・コンサルティング 1,104 AB&Company 1,502 ペイロール ▲788 Waqoo ▲688 QDレーザ


出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

表6から、マザーズへ上場するためには、営業利益が赤字のゼロであったとしても、上場を達成している会社は多く存在することがわかります。

2021年にマザーズへ上場達成した会社92社の内、直前期が赤字だった会社が20社、申請期の営業利益が赤字見込みの会社が13社もありました。

なお、平均値と中央値は、表7のとおりになりました。

表7 営業利益平均と中央値

平均値 中央値
直前々期営業利益(百万円) 86 97
直前期営業利益(百万円) 171 117
申請期営業利益(百万円) 306 243

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

2021年マザーズ上場達成会社の営業利益成長率まとめ

2021年に東証マザーズへ上場達成した会社の営業利益成長率上位5位と下位5位を表8にまとめました。

営業利益成長率の計算方法としては、「(営業利益率の差額)/(前年度の売上額)」としています。

表8 営業利益成長率TOP5とBOTTOM5

TOP5(%) BOTTOM5(%)
直前期 申請期 直前期 申請期
1 134 レナサイエンス 471 ペルセウスプロテオミクス ▲508 サスメド ▲388 サスメド
2 84 ココナラ 76 WACUL ▲242 ペルセウスプロテオミクス ▲147 レナサイエンス
3 82 Green Earth Institute 68 QDレーザ ▲24 QDレーザ ▲30 Photosynth
4 58 Enjin 68 ジーネクスト ▲20 WACUL ▲25 Enjin
5 36 Institution for a Global Society 51 coly ▲14 ジーネクスト ▲17 ステムセル研究所

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

マザーズへ上場するためには、高い成長可能性を有している必要があります。

高い成長性を説明するためには、直前々期⇒直前期⇒申請期に至る利益が伸び続けることが一般的に求められますが、業績が減収減益している会社でも、上場達成が出来る可能性があることがわかります。

2021年にマザーズへ上場達成した会社92社の内、直前期が減益だった会社が29社、申請期の営業利益が減益見込みの会社が14社もありました。

なお、その中で、2社(アールプランナー社、サスメド社)が直前期と申請期の2期連続で減益・減益計画を提出して、上場達成しています。

平均値と中央値につきましては、表9のとおりになりました。

表9 営業利益成長率の平均と中央値

平均値 中央値
直前々期営業利益成長率(%) ▲0.7% 3.2%
直前期営業利益成長率(%) 7.0% 5.4%

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

2021年マザーズ上場達成会社の営業キャッシュフローまとめ

マザーズへ上場するようなベンチャー企業の成長や価値を評価するためには、PLだけではなくキャッシュフローも重要な指標になります。

2021年に東証マザーズへ上場達成した会社の営業キャッシュフロー上位5位と下位5位を表10にまとめました。

表10 営業キャッシュフローTOP5とBOTTOM5

TOP5(百万円) BOTTOM5(百万円)
直前々期 直前期 直前々期 直前期
1 1,903 AB&Company 1,892 日本電解 ▲12,609 リニューアブル・ジャパン ▲6,729 リニューアブル・ジャパン
2 1,785 ペイロール 1,728 AB&Company ▲2,008 Finatextホールディングス ▲1,807 Appier Group
3 1,232 デコルテ・ホールディングス 1,547 セレンディップ・ホールディングス ▲1,545 Appier Group ▲1,751 Finatextホールディングス
4 989 プラスアルファ・コンサルティング 1,450 ペイロール ▲1,184 QDレーザ ▲1,208 QDレーザ
5 857 全研本社 1,447 プラスアルファ・コンサルティング ▲1,007 ココナラ ▲1,092 アールプランナー

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

マザーズへ上場する会社は、キャッシュフローが赤字になっている会社が多くあります。

2021年にマザーズへ上場達成した会社92社中、30社が直前期のキャッシュフロー赤字決算であり、そのうち20社が直前々期も赤字でした。

またラストワンマイル社、アールプランナー社、リニューアブル・ジャパン社の3社は、直前々期も直前期も当期純利益が黒字でしたが、営業キャッシュフローは赤字に終わりました。

平均値と中央値につきましては、表11のとおりになりました。

表11 営業キャッシュフローの平均と中央値

平均値 中央値
直前々期営業キャッシュフロー(百万円) ▲77 54
直前期営業キャッシュフロー(百万円) 52 143

出所:各社Ⅰの部およびプレスリリースを元にIPOAtoZ作成

まとめ

2021年に上場達成をした会社の業績をざっくりとまとめてみました。

マザーズ市場は、高い成長性を説明できることが上場の適合要件になっていますが、直前期までの売上や利益の実績、または申請期の売上や利益の見込が最重要ではないことがわかりました。

この兆候は、近年続いておりまして、マザーズ市場は以前より、高リスク市場としての位置づけを特色にするという方向にあります。それが上場達成企業の増加に繋がっています。

IPOAtoZでは、上場達成会社のデータをあれこれまとめておりまして、この記事で取り上げた売上や営業利益、営業キャッシュフローだけではなく、その他にもデータをまとめています。
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