東証における「SPAC制度の在り方等に関する研究会」は、これまでの議論を踏まえ「SPAC上場制度の投資者保護上の論点整理」(以下、「本論点整理」といいます)を公表しました。

こちらになります。

本論点整理によりますと、米国での2021年のSPACの上場件数は合計613件、全IPOの63%を占めるとされています。

なお、SPACとは↓のような会社になります。

SPAC(特別買収目的会社:Special Purpose Acquisition Company)とは

ここでは、本論点整理を読む時間が無い方向けに、5分程度で重要な箇所だけを抜粋して紹介させていただきます。

SPACの検討目的

SPACは、「資金需要が大きく、企業価値の算定が困難かつ革新的な技術を活用する」スタートアップ向けの資金調達手段として期待できるのではないかという事らしいです。

事実、米国のSPACの銘柄は、建設や外食等のわかりやすい会社ではなく、宇宙関連や賭博、売上ゼロのEVメーカーなど一見、怪しい会社がSPACを活用しています。

ちなみにブログの中の人は、怪しい会社に投資した経験があり、大損してしまいました。

また、SPACは米国だけではなく、英国、ドイツ、カナダ、フランス、イタリア、韓国での主要取引所で上場可能となっておりまして、日本が出来ないというのは、国際競争力の観点で検討が必要という事もあります。

SPACの上場の課題

本論点整理ではSPACの課題は↓であると述べています。

  • 米国をはじめとする諸外国では、SPACの上場基準において、流通市場における一定の流動性要件(株主数・流通株式比率・時価総額など)を定めている。
  • 日本においてSPACの上場制度を検討するにあたっても、とりわけ不特定多数の投資者の投資対象となる一般市場への上場を想定する場合には、流通市場における公正かつ円滑な価格形成を確保するため、十分な流動性の確保が必要となる。
  • また、SPACに対する投資者の投資を促すため、普通株式と新株引受権(ワラント)とを組み合わせた「ユニット」株式として、SPAC株式の募集が広く行われている。通常、「ユニット」株式は、発行後に(一定の条件を充たしたときに分離譲渡が可能な設計となっており、取引所は、「ユニット」株式と分離された株式及びワラントをそれぞれ異なる上場商品として取引対象としている。
  • ワラントについては、株式とワラントの分離譲渡が可能であることにより、新たな裁定機会が生じるとの指摘があるほか、SPAC株主による合併や買収時の意思確認プロセスへの影響などの指摘があることを踏まえ、特に一般市場への上場を想定する場合には、ワラントの付与率その他の上場制度上の取扱いに加え、「ユニット」株式の取引や決済などの枠組みについて検討が必要となる。
  • なお、SPACのIPOにあたっては、SPAC自体は具体的な事業実績を有していないものの、企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性や、企業内容等の開示の適正性については、一般の事業法人の場合と同様に、IPO時の新規上場審査の確認を行うこととなる。

SPAC銘柄は、あまりにもリスキーなため、TPM(東京プロマーケット市場)での活用も検討されたようですが、流動性の観点から、TPMとは別扱いになりそうです。

SPAC市場という別市場を設けることを検討されているようですが、証券会社における対応コストの関係上、否定的なようです。

SPACであることが容易に判別可能な銘柄名称を使用することによって、投資者においてSPACが特有のリスクを有する金融商品であること、さらにはそのリスクを適切に認識したうえで投資を行うことが確保される仕組みとすることになりそうです。

今後、検討される論点

今後も引き続き、↓のような論点で検討される模様です。

  1. SPAC上場制度の導入の意義・必要性を踏まえ、SPAC制度構築に向けた投資者保護策を検討することとしてはどうか。
  2. SPACの対象投資者層に応じた、実効的かつ適切な投資者保護の在り方について検討を継続することとしてはどうか。
  3. SPACスポンサー(運営者)に関する開示・規制(報酬・事前スクリーニング等)のあり方についてどのように考えるか。
  4. SPACの上場制度において、流動性やワラントの売買、開示規制等に関する枠組みをどのように設計するか。
  5. 賛成株主への現金償還権の付与や社外取締役による適切な監督のあり方、それらに代替・補完する合併条件の公正性・妥当性の確保の仕組み(PIPEs※義務付け・第三者評価の取得)についてどのように考えるか。
  6. 合併や買収プロセスと上場適格性の確認プロセスの調和(実効的なバランス)をどのように確保するか。開示を求める枠組み(金商法・上場規則)や開示責任のあり方についてどのように考えるか。

※ PIPEs:(Private Investment in Public Equities)は、私募形式による上場会社株式の募集・売出しをいう。日本において、SPACが類似の資金調達を実施する場合には、機関投資家との間で引受契約を締結し、第三者割当によって新株式を発行することになると想定される。

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