東証で新市場区分がスタートしました。
その概要につきましては、↓で説明しています。ご参考下さい。
新市場区分が開始しても、全く影響を受けない会社がある一方、新市場区分の開始によって経営者が神経を尖らせることになった会社もあります。
東証は4月4日現在、3,771社の上場会社の中で、上場維持基準への適合計画を開示した会社が549社も存在すると報告しています(東証の発表は、こちらになります)。
つまり、上場会社の中で7社に1社程度が市場区分変更によって、上場維持のために何等かの対策を行わなければいけなくなりました。
そこで、これらの会社の対策内容を考えてみました。あくまでもブログの中の人の考えであることにご留意ください。
流通株式比率を上げるための対策
上場会社が、上場維持するためには、流通株式比率を次のようになる必要があります。
上場維持基準 | |
---|---|
プライム | 35%以上 |
スタンダード | 25%以上 |
グロース | 25%以上 |
流通株式につきましては、↓で説明しております。ご参考下さい。
流通株式比率を高めるためには、次のような対策が考えられます。
新株式または新株予約権を発行する
公募増資、または従業員へのストックオプション発行が考えられます。
しかし、株価下落が懸念されるため、配慮が必要になります。
IPO時には、コーナーストーン投資家、または事業会社へ親引けすることも方策として考えられます。
自己株式を活用または消却する
自己株式の消却をすると、流通株式比率の向上が出来るようになります。
自己株式の消却は、株価形成上もポジティブに判断されやすいです。
また、譲渡制限付株式報酬やストックオプション、M&Aには自己株式を活用することが考えられます。
近年、信託銀行は、自己株式を一旦信託し、活用するという商品を開発しています。
三井住友信託銀行の商品は、こちらになります。
「流通性の乏しい株式」を保有する株主に株式売却依頼する
流通株式比率が低い会社が最初に取り組む方策の中で、最も多く使われる方策は、この方策だと思います。
最も懸念されるのは、株式の需給バランスが崩れてしまい、株価が下がってしまうことになります。
その懸念を低減させるために活用されているブロックトレードは、通常、「流通性の乏しい株式」を保有する株主が株式を売却する際に使われる手法です。
さらに大量保有報告書やインサイダー取引について、配慮が必要になります。
役員を退任させる
形振りかまわず(なにふりかまわず)、少しでも流通株式比率を減らそうとするのであれば、株式を保有する役員を退任させることも一つです。
さらに役員の配偶者が株主であれば、離婚するという事もあります。
(もちろん、上場維持のために、役員をクビにするとか、離婚するとかはありえませんが。。。)
役員持株会を解散または休会する
役員持株会が保有する株式は、「流通性の乏しい株式」になります。つまり、役員持株会が運営している会社は、毎月徐々に、流通株式比率が低下してしまうということになります。
役員持株会を休会することによって、流通株式比率低下をストップさせるという手段が考えられます。
さらに、役員持株会を解散させ、持株会会員へ株式の振替を行い、速やかに株式売却するという手段も考えられます。
しかし毎月行われる買付をストップさせる事は、株式の需要を下げてしまう事になります。
流通株式時価総額を上げるための対策
上場会社が、上場維持するためには、流通株式時価総額が次のようになる必要があります。
上場維持基準 | |
---|---|
プライム | 100億円以上 |
スタンダード | 10億円以上 |
グロース | 5億円以上 |
流通株式時価総額を上げるには、上述した「流通株式比率を上げるための対策」を踏まえた上で、次のような対策が考えられます。
- 強い決算数字を開示する。
- IR体制の強化
- 増配
- 株主優待の導入・拡充
- 英文開示の充実など
なんと言っても、強い決算を出すことが基本線になることは間違いありませんね。
売買代金を上げるための対策
上場会社が、上場維持するためには、売買代金が次のようになる必要があります。
上場維持基準 | |
---|---|
プライム | 月平均0.2億円以上 |
スタンダード | 月平均10単位以上 |
グロース | 月平均10単位以上 |
売買代金を上げる方策としては、やはり個人投資家を呼び込む対策が必要になります。
機関投資家を狙っても、一定以上の流動性を見込めない株式をなかなか購入してくれません。
売買代金を上げるためには、上述した「流通株式時価総額を上げるための対策」を踏まえた上で、次のような対策が考えられます。
- 株式分割する
- 持株会を活性化させる
持株会の活性化については、↓で紹介しています。ご参考下さい。
最終手段
上述したような内容の対策をフルセットで行ったとしても、上場維持基準を充足出来なくなりそうな場合、最終手段として、次のようなドラスティックな手段しか存在しないと思います。
- 非公開化
- 上場維持基準を充足しない会社同士の合併
- 上場維持基準を満たす上場会社の傘下に入るなど
来年あたり、上場会社の合併が急増するかもしれませんね。
まとめ
上場維持基準への適合させるための方策を考えてみました。
株主にとっては、次のようにカテゴライズされそうです。
対応策 | |
---|---|
株価にポジティブ | 増配、株主優待導入・拡充、自己株式消却、持株会活性化、IR体制拡充 |
株価にネガティブ | 新株発行、新株予約権発行、役員持株会休会・解散 |
株価に無関係 | 自己株式活用、株式分割(一時的にポジティブ)、「流通性の乏しい株式」を保有する株主に株式売却依頼 |
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