IPO時に新規株式を発行し、資金調達する場合、IPOの審査において「手取金の使途」のヒアリングを受けます。

特に飲食店や小売店のような多店舗運営会社のほとんどのIPOは、手取金の使途が店舗開発投資になっています。

そこで、IPO審査における定番質問のひとつに「店舗の開発基準は、どのようになっていますか?」があります。

ここでは、店舗開発基準について、取り上げさせていただきます。

手取金の使途の開示

IPOする際に目論見書と有価証券届出書を作成し、開示することになります。

それらの書類の中には「手取金の使途」という欄が存在します。

IPO時に資金調達する場合、その箇所に↓のようなルールに則って、資金調達する目的や使い道の計画を記載することになります。

【手取金の使途】

  • 提出者が取得する手取金の使途を設備資金、運転資金、借入金返済、有価証券の取得、関係会社に対する出資又は融資等に区分し、手取金の総額並びにその使途の区分ごとの内容、金額及び支出予定時期を具体的に記載すること。
  • 当該手取金を事業の買収に充てる場合には、その事業の内容及び財産について概要を説明すること。

(出所:「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式 記載上の注意より)

IPOした会社が開示した「手取金の使途」の一例を次に紹介します。

調達資金を、いつ、何に、どれだけを投資する予定なのかがしっかりと書かれていることがわかります。

手取概算額380,620千円については、「1 新規発行株式」の(注)5.に記載の第三者割当増資の手取概算額上限150,282千円と合わせて、全額を設備資金として①新規開設する介護施設の建物及び構築物等、②福祉用具営業所の新規開設に充当する予定であります。具体的な内容及び充当時期は以下に記載の通りです。

①介護事業セグメントにおける介護施設を新規建設にて開設する予定です。2023年3月期ではグループホームを長野県諏訪市に1ヵ所、埼玉県羽生市に1ヵ所、看護小規模多機能型居宅介護を長野県松本市に1ヵ所の開設による建物及び構築物として191,483千円、2024年3月期ではグループホームを長野県に1ヵ所、看護小規模多機能型居宅介護を長野県に1ヵ所、介護付き有料老人ホームを栃木県に1ヵ所の開設による建物及び構築物等として307,419千円を充当する予定です。

②福祉用具事業セグメントにおける福祉用具営業所の新規開設を2023年3月期では栃木県小山市に1ヵ所、2024年3月期では埼玉県に1ヵ所を予定しています。営業所の開設に伴う必要な器具備品として32,000千円(2023年3月期:16,000千円、2024年3月期:16,000千円)を充当する予定です。

なお、上記調達資金につきましては、具体的な充当時期までは、安全性の高い金融商品等で運用していく方針であります。

(出所:エフビー介護サービス株式会社 有価証券届出書より)

「手取金の使途」に関連するブログ記事は、↓のようになります。

手取金の使途ランキング【IPO分析】

資金調達に関するIPO審査

東証が発行する新規上場ガイドブックには、以下のような一文が存在します。

新規上場時に公募増資等を行う場合には、調達資金による具体的な投資計画の内容、その投資回収の見通しについても確認を行います。

(出所:東京証券取引所「新規上場ガイドブック」より)

したがいまして、IPO審査では、調達資金でどのような投資をするのかを間違いなく質問されます。

中長期の店舗開発計画やキャッシュフロー計画、人員計画等への反映が求められます。

飲食店や小売店のような多店舗運営会社のIPOの場合は、調達資金を新店舗開発に充当して、規模の拡大を目指すケースがほとんどです。

そのような会社の場合、間違いなく、新店舗開発の基準を一定レベル設定する必要があります。

基準の設定方法やファクター等は、会社によって異なりますが、絶対にやってはいけないのがオーナー社長等の一部の人の勘に頼りきるという事です。

調達資金を効率的、かつ有効に投資するという説明が求められます。

店舗開発基準の重要性

ブログの中の人が前職の証券会社におきまして、ステップアップ案件で担当した上場会社の居酒屋チェーン社長は、「〇〇ちゃん(私をちゃん付けで呼んでいました)。取締役会って何の会議がわかる?」と質問をされました。

私は法令上のありきたりの回答をすると「それは間違っていないけど、ちょっと違うなぁ。取締役会というのは、店舗開発基準を作るための会議や。」と言われました。

さらに「居酒屋経営で最もキャッシュを要するのが、新規店舗開発なんや。でも、どのような場所が成功するのかが全くわからない。店の前の人通りが多い場所、駅前が良いという単純な事でもない。店舗開発基準の策定でもがき続けることが取締役会の重要な役割なんや。店舗運営は、店長とエリア長が実行するから、経営陣はアレコレ言われへん。」という言葉がありました。

さらに「店舗開発基準は、時代によって変わるから、永遠に完成しない。もし完成すれば、居酒屋の商売を止めて、その店舗開発基準をウリにしたコンサルの方が儲かるわ。」と仰っていました。

その会社の店舗開発規程は、成功した店舗や失敗した店舗を生んだ要因を分析した上で、何十回も小まめに改訂されていました。

店舗開発規程のひな型

多店舗経営をしている会社は、店舗開発規程の整備が必須になります。

私が住む関西には、大阪梅田に国内書店売上トップ3に入る紀伊国屋梅田本店という書店があります。

その書店には、市販の規程集が数冊、棚に並んでいましたが、どの規程集にも店舗開発規程が存在しませんでした。

また「店舗開発規程」でググっても、全く出てきませんでした。

そこでブログの中の人が使っている店舗開発規程のひな型を公開することにしました。ご参考下さい。

あくまでもブログの中の人が利用するものでありまして、皆様は、主幹事証券会社やコンサルの方達とご相談の上、各会社の運営出来そうな店舗開発規程を作成していただきますようお願いします。

「このひな型案をベースに作成しました」とご連絡頂ければ、幸甚です。

店舗開発規程のひな型

(目 的)
第 1 条 本規程は、新規店舗の出店にあたり、立地選定、交渉、売上高、利益予測、出店決裁までの手順を明確にし、当社が新規出店において的確な判断を下すことを目的とする。

(主管部門)
第 2 条 本規程の主管部門は、●部とする。

(出店計画)
第 3 条 ●部は、出店計画案(新規出店候補地域、概算収支・資金計画)を策定のうえ、経営会議を経て取締役会の承認を得るものとする。

(物 件)
第 4 条 出店地域は、政令指定都市を中心とした日本国内主要都市とする。
2.立地の基本的条件は、原則として次のとおりとする。
1)商圏人口:商圏人口は●万人以上(半径●Km)を基準に選定する。
2)投資回収:投資額を●年以内に回収できることを基準とする。
3.施設の基本的条件は、原則次のとおりとする。
1)施設及びフロア:ブランドイメージ及びブランディング方針と合致している、もしくは高める効果を期待できることを基準とする。又、既存の卸・得意先様との商圏バッティングしない、もしくはバッティングしても問題が無いことを基準とする。
2)面積:展開可能な●数及びディスプレイスペース、ストックスペース等を勘案し最適な坪数を基準とする。
3)場所:店前通行量及び導線を勘案して最適なフロア及び場所を基準とする。
4.前各項の条件を満たさない場合は、基準不適合であることを明確にしたうえでの取締役会の審議を経て、承認を得なければならない。

(情報の収集)
第 5 条 候補地および物件の情報は主として、次により入手する。
1)商業施設デベロッパー、不動産業者および建設業者からの情報
2)既出店先、金融機関などの各取引先からの情報
3)出店担当者からの情報

(取引先選定)
第 6 条 新規店舗出店を行うに際し、店舗設備や什器備品の購入・設置、内装工事、その他の工事・作業等を依頼する場合、その依頼先・発注先、委託先の選定においては、原則として、以下の要素を総合的に勘案し、決定する。
1)過去の取引実績(瑕疵、不備、商品返品・交換等も含む)
2)デザイン、各種工事、各種作業、納品物、アフターサービス等の品質
3)当社側の店舗開発の過程における工数削減、効率化への寄与度
4)複数の見積り金額の中で、相対的に安価であること
5)取引先として選定する事について当社が受ける利益の有無、程度

(個別物件出店決議)
第 7 条 新規出店立案者は、仲介業者や地権者等の関係者に対する反社チェックを行った後、業務分掌決裁権限基準表に基づき、●部部長及び●部管掌役員と共同で個別物件出店計画書を作成し、当該個別物件出店計画書を元に取締役会へ付議し、承認を得なければならない。
2.個別物件出店計画書には、近隣調査及び各種情報収集に基づいて、次の内容を記載しなければならない。
1)物件の概要(物件名、物件の表示、公法上の規則、各種制約等)
2)立地条件及び周辺環境特性(同業競合店や異業態競合店の有無、集客施設の有無等)
3)開店予定日及び開店に係る諸準備工程表
4)店舗出店に係る主要取引先(内装工事や備品購入等)とその選定理由
5)収益及び投資回収計画書
3.個別物件出店計画書には、原則として、下記の資料を添付する。
1)周辺地図
2)敷地配置図(ビルインショップの場合)
3)周辺写真
4)基本条件書又はそれに類する書類
5)仲介業者がいる場合はその詳細
6)商圏分析資料
7)その他出店判断に必要な資料

(契約書)
第 8 条 契約書は、●部が顧問弁護士に文書確認を依頼するものとする。

(変更手続き)
第 9 条 当該物件において、取締役決議後に重要事項につき追加、修正などがあった場合は、直ちに変更後の内容で改めて同様の手続きで承認を受けるものとする。

(契約調印)
第10条 調印については、代表取締役が地権者と契約調印を行う。

(不動産仲介手数料の支払)
第11条 仲介業者の仲介により成約した場合、規定の仲介料を支払う。

(附 則)
第12条 ●年●月●日 制定。
2.この規程の改廃は、「規程管理規程」の定めるところによる。

まとめ

店舗開発基準の重要性を説明するとともに、店舗開発規程のひながた案を紹介させていただきました。

店舗開発の逆として、店舗の撤退・閉店に関するブログ記事も作成しております。

ぜひご参考下さい。

店舗撤退・店舗閉店基準の重要性(店舗撤退・店舗閉店管理規程のひながた案)

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