上場達成の難易度は、簡単になったり、難しくなったり、明らかに時によって変化します。

それは、まるで振り子のようです。↓で説明しています。

上場の難易度の転換点とは

昨年、IPO達成会社数が非常に多く、また現段階では、今年もその勢いを止めていません。

このような点からも、現段階では、上場達成の難易度が高くないことは明らかのようです。

しかし、ブログの中の人は、今後、上場達成の難易度が今後一気に上がると予想しており、IPOの件数のペースが落ちると予想しています。

その理由をいくつか紹介させていただきます。

なお、この記事は、あくまでもブログの中の人の個人的予測であり、保証等をするものではありません。

上場達成企業に不正会計が続出している

上場の難易度が上昇するトリガーとして、上場達成したばかりの会社の不祥事があります。

過去、インパクトの大きな不祥事によって、主幹事証券会社や東証による審査のハードルが高くなることが過去に何度もありました。

その代表例のひとつがエフオーアイ事件です。↓で紹介しています。ご参考ください。

【粉飾決算でIPO】株式会社エフオーアイ【IPO不祥事事例②】

エフオーアイ事件は、IPO業界に対し、一気に冬の時代を到来させました。

一方、最近、上場前に不正会計を行っていた事例が発覚しています。

↓に昨年発覚したIPOに関する不正会計事例を紹介します。

2021年に発覚した不正会計の内、上場前に不正会計を行っていた事例
  • グレイステクノロジー株式会社:上場前から架空で売上計上し、直近決算期では年間売上高の半分強が架空だった(こちらになります)
  • 株式会社EduLab:上場前の会社設立2年目から、粉飾を続けた(こちらになります)
  • 株式会社アウトソーシング:上場申請中の子会社グループにおいて不正会計があった(こちらになります)

↑に取り上げた会社の中でも、グレイステクノロジー株式会社は、上場廃止になるというインパクトが非常に大きな粉飾です。

このような事があれば、監査法人、主幹事証券会社や東証に対し、投資家やマスコミ等からの風当たりは強くなります。第2のグレイステクノロジー株式会社を証券市場にデビューさせないために、監査法人、主幹事証券会社や東証が今までよりも慎重な対応をとることは間違いありません。

金利が上昇局面にある

2月10日に日経新聞に「世界の金利、水没脱出」という記事があります(こちらになります)。

さらに2月12日の日経新聞には「金利上昇 世界に広がる」という記事(こちらになります)が続き、金利の上昇は、現在、経済にとって大きな関心事になっています。

これらの記事の内容は、世界で国債利回りが急上昇し、市場では債権の魅力が戻り、株や不動産の投資にブレーキがかかるという記事になります。

金利が上昇すれば、株式市場においては、特に「グロース株」や「小型株」というリスクが大きな資産にある銘柄が非常に不利になります。

数年に一度のIPO株式を除き、ほとんどのIPO株式は、「グロース株」や「小型株」に該当するため、金利が上昇すれば、IPO株式に投資資金が集まりにくくなります。

過去3か月間、TOPIXはほぼ横ばいであるにも関わらず、東証マザーズ指数とIPOインデックスは、約4割下げています(2022年2月10日現在)。

米連邦準備理事会(FRB)は、今後も利上げに踏み切る公算が大きいと言われ、その影響により世界的な利上げに進むと言われています。

すなわち暫くの間、IPO株式に投資資金が入りにくい市場環境になってしまう可能性があります。

金利が高い状況は、3カ月や半年というレベルになく、年単位で続く公算が高い説が有力のようです。

米国株式投資のインフルエンサー後藤達也氏がYoutubeで金利についてお話されていらっしゃいます。ご参考にどうぞ。

「公開価格の設定プロセスのあり方等に関する報告書案」はIPO投資にネガティブ

2月10日に日経新聞で「壊れてしまったマザーズ」という記事があります。こちらになります。

この記事の内容は、「『IPO時の公開価格の値付けの見直し』に対して、海外投資家が反発した」という内容の記事です。この記事によれば、『IPO時の公開価格の値付けの見直し』をきっかけにして、香港の大手ヘッジファンドが日本のIPOへの参加を見送ることにしたとの事です。今後、海外の機関投資家等が日本株から撤退するかもしれないとの記事になっています。

「IPO時の公開価格の値付けの見直し」については、↓で紹介しています。ご参考ください。

日本証券業協会「公開価格の設定プロセスのあり方等に関する」報告書案が公開

上場直後のIPO株式は、特に小規模なIPOであればあるほど、初値が暴騰するケースがありますが、これはヘッジファンド、および投機を好む個人投資家に支えられているという側面が存在することは間違いなくあります。また、多くの個人投資家の中には「IPO株式は、安い」というアノマリーが働いているのは事実です。

今後「IPO時の公開価格の値付けの見直し」が実行されることにより、日経の記事に取り上げられたヘッジファンドのようにIPO銘柄への投資参加者が減ってしまうと、初値等のIPO直後の株価が上がりにくくなってしまう可能性があると考えます。

「IPO時の公開価格の値付けの見直し」の検討を開始した理由のひとつとして、「公開価格が初値等、IPO直後の株価に比べて安いため、公開価格を上げましょう」があります。

つまり、この見直しは、上場を目指すベンチャー企業への支援策として政府(大元は、立憲民主党)が主導したものですが、結局”やぶへび”に終わり、投資家だけではなく、上場達成企業にとっても、悪影響を及ぼす可能性があると考えています。

まとめ

IPOの難易度に転換期が来る、すなわち今後IPOの難易度が一気に上がる事について紹介させていただきました。

そもそも東証や証券会社がIPOの難易度を上げる目的の一つには、↓のような上場ゴールと呼ばれるような品質の悪い会社が証券市場へ登場することを防ごうとする面が大きく存在します。

【典型的な上場ゴール】株式会社Gumi【IPO不祥事事例③】

もし、IPOの難易度が一気に上がったとしても、「魅力的なビジネスモデルを持っている会社」かつ「信頼性の高い予実管理を行っている会社」かつ「情報開示に対する資質や能力が高い会社」にとりましては、寧ろウェルカムな市場環境になるかもしれません。

IPOの件数は落ち込めば落ち込むほど、少数精鋭になるため、IPO達成企業は、今まで以上に注目度が高まることになるためです。

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