アメリカのIPO市場は、日本の数倍活発であり、去年も引き続き、モノ凄い銘柄がバンバン上場しました。

今年中に上場すると言われる会社の目玉の1社として、ロブロックスというゲーム会社があります(ロブロックスがIPOすれば、ブログの中の人は『鬼滅の刃』の嘴平伊之助以上に猪突猛進の精神でSuper Strong Buyと考えています)。

ロブロックスは、昨年、IPOの1歩手前まで準備をしていましたが、「もうチョット待てば、公開価格をもっと上げることが出来るんじゃねーの?」という理由で、IPOを延期したと言われています。

ロブロックスは、IPOで上場するのではなく、「ダイレクトリスティング」という手段で上場すると言われています。

つまり、IPO以外で株式上場をする手段が存在するということです(東証でも不可能ではありません)!

「ダイレクトリスティング」という手法で上場した会社は、これまでにも実績がありまして、ビンラーディンの追跡に大貢献したと言われるビックデータ解析会社のパランティア・テクノロジーズ、世界中でに音楽ストリーミングサービスを展開するスポティファイ・テクノロジー、などなどいわゆるユニコーンと呼ばれる会社が「ダイレクトリスティング」の手法で上場しました。

ここでは「ダイレクトリスティング」について簡単に説明させていただきます。

ダイレクトリスティングとは

日本のIPOのほぼ全てがブックビルディング方式を採用しています。

ブックビルディングについては、こちらで説明しています。

ブックビルディング【IPO用語】

ブックビルディングの流れを理解しましょう

ブックビルディングでは、自社株式を幹事証券会社に引受させて、上場します。

つまり、会社が発行する株式、または売出人の株式を一旦、幹事会社を経由させて、個人株主等に売却するということになります。

ダイレクトリスティングとは直訳すると「直接上場」となります。

ダイレクトリスティングは、ブックビルディングとは違って、会社が発行する株式、または売出人の株式を、幹事会社を経由せず、直接個人株主等に売却するということをいいます。野菜農家をイメージすると、ブックビルディングは、農家が農協や卸売市場等を通じて野菜を販売する手法であり、ダイレクトリスティングは農家が一般家庭に野菜を直販する手法というイメージになります。

なお、会社が新規発行する株式をダイレクトリスティングすることは、法律面と実務面の観点から、不可能です。会社が発行する株式を一般株主のAさんにダイレクトリスティングする行為は、Aさんに対する第三者割当増資ということになるためです。ダイレクトリスティングする度に第三者割当増資の決議をいちいちしなければいけなくなるのは、現実的ではありませんね。

つまり、ダイレクトリスティングを行う会社は、上場時に会社は株式発行せず、売出だけを行う場合のみに限られます。

売出については、こちらで説明しています。ご参考ください。

売出し・売出【IPO用語】

ダイレクトリスティングのメリット

ダイレクトリスティングがブックビルディングによるIPOと比べたメリットは、次のようなことが考えられます。

ダイレクトリスティングによる主なメリット
  1. 引受証券会社を必要としない
    • 引受証券会社へ支払うコストが一切ゼロ!
    • 主幹事証券に対する情報助言手数料等も一切必要ない!
  2. 上場までの時間が短縮できる
    • 引受審査が必要なくなる!
    • ロードショーも必要なくなる!
  3. 売出人による売却価格の最大化を図れる
    • 発行価格は、IPOディスカウントを考慮して設定されるが、IPOディスカウントの観点が全くない
    • 引受手数料がない
  4. ロックアップ期間が無い
    • ロックアップ期間が無いため、ベンチャーキャピタル等の株主にとって、現金化のスピードが速い

一方、次のようなデメリットが考えられます。

ダイレクトリスティングによる主なデメリット
  1. 株式の新規発行が出来ない
    • 事業資金を増資に頼る必要がない会社に限られる
  2. 主幹事証券会社が不在である
    • 上場審査において、主幹事証券会社の支援が得られないため、上場審査対応部署の能力が高い必要がある

ダイレクトリスティングのメリットは、会社側よりも株主側に大きいように思えます。

ダイレクトリスティングで上場する会社とは、資金需要がなく、かつ、主幹事証券会社が提案した想定売出価格等に対して、株主が不満に感じた場合、または株主が株式市場で株式売却をしたいという意思が強い場合と想定できます。

なお、米国のナスダックのホームページには、ダイレクトリスティングについて、次のような3つのメリットがあるという記述があります。

ナスダックでのダイレクトリスティングのメリット
  1. 流動性へのアクセス
    • 資本を調達することなく株主に流動性を提供しています。
  2. 独自技術
    • ナスダックのクラス最高のテクノロジーであるBookviewerは、直接上場の初期価格設定中に注文データのリアルタイムビューが提供できる。
  3. ロックアップ期間なし
    • 既存の株主は、取引の初日にすぐに株式を現金化することができる。

(出所:NASDAQのHPをIPOAtoZ翻訳)

日本におけるダイレクトリスティング

新聞等によると1999年に杏林製薬がダイレクトリスティングを行ったようです。これは、株主が株式売却を株式市場で行いたいとの意向が強かったとのことです。

東証での規則では、本則市場へ新規上場をする場合、ダイレクトリスティングによる上場が可能になっています。

一方、マザーズの場合は、形式要件に「500 単位以上の新規上場申請に係る株券等の公募を行うこと」という項目が存在するため、ダイレクトリスティングが出来ません。

なお、東証は2022年4月に市場改編を行う予定になっていますが、ダイレクトリスティングによる上場が可能になるかどうかは、本ブログ作成段階において、明確になっていません。

まとめ

ダイレクトリスティングを選択する会社とは、次のような会社になります。

ダイレクトリスティングを選択する会社の要件
  1. 上場意欲が強い、または、上場しなければいけない理由がある
  2. 資金需要が無い
  3. 株主が想定するバリュエーションに比べ、想定売出価格が安い(IPO時に売出するより、IPO後に市場で売却する方が利益を得られる自信を持つ株主が揃っている会社)

新規上場する際、本則上場へ上場した会社、かつ株式発行をしなかった会社は、2019年と2020年に「フォーラムエンジニアリング」「雪国まいたけ」「ダイレクトマーケティングミックス」「バリオセキュア」「ローランド」の5社あります。

つまり、これらの会社は、IPOではなく、ダイレクトリスティングを選択できたということになります。

この5社の共通点として、全て初値が公募価格を下回っている点があるため、上述した「ダイレクトリスティングを選択する会社の要件」の3つ目である「株主が想定するバリュエーションに比べ、想定売出価格が安い」ということは、当てはめにくいことになります。

上に挙げる5社のようなオールドエコノミー企業ではなく、ピカピカのグロース企業、かつ、上場時には既に資金が潤沢にあり、営業CFがプラスになっているような会社に限られるのかなあと思います。