上場準備を始める前に何を知らなくてはいけないのか?という事については、市販のIPO本のほとんどで述べられています。

東証でも簡単に紹介しています。こちらになります。またはこちらになります。

中でも上場のメリットデメリットという類は、ほぼ全てのIPO本に記載されていると思われます。

IPO AtoZでもそのようなブログ記事もございます。

IPOのメリットとデメリット

ちょっと突っ込んだ記事もあります。↓になります。

IPOのデメリットを最近、上場達成した会社事例から考えてみました

株主提案権の事例紹介【IPOのデメリット】

ブログの中の人が大事と思っているにも関わらず、あまりIPO本に書かれていないような上場準備開始前に知っておくべき心構えを取り上げさせていただきたいと思います。

しょっぱい親父が言う事なので、特に若い方々にとってはウザいと思われる内容かもしれませんが、とても重要であると考えている事なので書かせて頂きます。

あくまでもブログの中の人の個人的な意見であり、違う意見の方も大勢いらっしゃると考えております。

第三者からの視線を意識する

ブログの中の人は、ほぼ毎日Twitterを楽しんでおりますが、その中には疑問を抱くようなツイートも多く存在します。

疑問を抱くようなツイートの一つが↓のような写真付きツイートです。

スタートアップ経営者が腕組ポーズを決めた写真とともに「資金調達しました」と報告するツイートです。

同様なツイートが連日のように何度も何度も流れてきます。酷かったのが、銀行借入で資金調達をして、上の写真のようなツイートがあった事です。

私の感覚が古いのか、性格が悪いのか、職業病なのかわかりませんが、「この人達って、資金調達出来たことを自慢したいの?」「何か勘違いしてない?」と感じてしまいました。

私は、前々職でVCから約4億円調達して、会社設立を行った経験があります(もし、VCからの資金調達が自慢になるのであれば、言わせて頂くと、私が行った資金調達は、商品テストサンプルを片手に、資金調達コンサルを一切通さず、やわらか銀行リード&某大手証券会社の直接投資を実現しました。大手証券会社が会社設立時に直接投資することは、数年に1度の出来事らしく、凄いファイナンスやでと言われた事を覚えております)。

資金調達するまでに紆余曲折がありました。しかし全てのVCと投資契約書を交わさせて頂いた時、嬉しいという気持ちよりも、「とりあえず2年間、テストウエハを作る開発資金を確保できた」という安堵感しかありませんでした。

少なくとも資金調達を記念しての写真撮影、また当時SNSがあったとしても、SNSに載せようとする発想なんて、1ミリもありませんでした。

資金調達については、企業PRするべき内容とも思えず、間違いなくホームページへ記載もしなかったと思います。

そのような感覚を持ってしまっている私は仕事柄、今後も引き続きIPOを目指す会社関係者に接触することがある立場ということもありまして、私が持っているこの感覚は、「今となってはヘンなのか?時代が変わったのか?」「そもそも私の感覚がヘンなのか?」と不安になり、アンケートを実施してみました。

↓です。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

「私も理解できない」に同調するご意見が多い結果となりました。これは私の感覚に同調する人が多いという事です。

なお、私のアンケートの文面に問題があり、私の感覚に同調する答えをしようとしたところ「私は理解できる」にポチっとしてしまったという方が最低2名いらっしゃいました。したがいまして、この2人の意見を反映させていただきますと57.3%が「私も理解できない」という事になります。

その方のツイートを紹介させていただきます。

ネットで確認したところ、138というサンプル数でこのような結果が出たアンケートは、さらに多くのサンプル数を確保したとしても逆転が難しいようです。

したがいまして「資金調達の報告を経営陣がドヤ顔の写真付きでSNSにあげる行為は、ヘンだと思っている人が大半である」ということは、一定以上の信頼性がありそうです。また、私のツイッターのフォロワーの方々は、概ね上場準備について熟知されていらっしゃる方が大半をしめておりますので、このアンケート結果は、無視できないと考えます。

私はこの結果から、今後、クライアントが資金調達をした時、「資金調達の報告をドヤ顔の写真付きでSNSに出すのは止めなさい。きっと半数以上の人から、「???」と思われるよ。」とアドバイスするつもりです。

さらにGoroazabuさんは、次のようなツイートをされていらっしゃいます。

こんな事ありえません。

投資家は、投資資金の全額を成長資金に使ってほしいと期待して、投資したはずです。

私がファンドマネージャーであれば、間違いなくブチ切れますね。

上場は、監査法人、証券会社、証券取引所から一定の評価を受けた会社、つまり第三者からの評価を受けた会社のみが達成できます。

上場を目指すためには、考えた事や思った事を端的に行動するのではなく、第三者からどう思われるのかを考えた上で行動に移す習慣づけを強くお勧めします。

外部専門家から魅力のある案件と思わせるようにする

上場を目指すとなると、監査法人の公認会計士、証券会社の証券マン、証券取引所のエリート社員から一定の評価を得ることができた会社だけが上場達成できることになります。そして、高い評価を受けるためには、司法書士や税理士、弁護士等(以下では総称して「外部専門家」といいます)の協力が必要になります。

このブログをお読み頂いている方は、上場準備が大変なのは十分知っていると思いますが、これは上場準備作業を直接行っている人だけが大変なのではなく、外部専門家も大変です。

さらに昨今、特に監査法人や主幹事証券の証券マンの人員が不足していると聴きます。

そのような状況下にあるため、上場を達成するためには、これらの外部専門家の目を自分の貴社へ引き込み、上手く生かしていく事が肝要であることは間違いありません。

一方、一般的にスタートアップは、高額なフィーの支払が出来ず、どこの経営者でも、外部専門家へ支払うコストを何とか抑えようと考えます。

これは当然の考えであり、否定できませんが、同時に外部専門家にとって、魅力的な案件ではなくなってしまいます。

スタートアップの経営者は、「どうすれば外部専門家から、フィー以外でご自身の会社と接することが魅力的な案件と思わせるか」を検討すべきであると思います。

最悪なのは、外部専門家を単なる外注先として考えることです。また、行き過ぎた自己主張を行うこともご法度です。

必須なのは、外部専門家と接する際、謙虚な姿勢を持つことです。しかしそれだけでは、足らないと思います。金銭以外の手段で外部専門家をどうやって気持ちよく働かせるかを考えてみましょう。

上場会社になれば「社会の公器」になる事を理解する

フェラーリやランボルギーニ等、高級車自慢をInstagramやTwitter等でアピールする行為をしている人が少なからず存在します。

多額の利益剰余金を溜め込んでいるようなオーナー会社社長であれば、他人から何も言われる筋合いはないと思われます。

しかし、利益剰余金、会社の純利益や営業キャッシュフローがトントン、またはマイナスである状態の会社でありながら、オーナー会社社長がフェラーリに乗る事が出来るような高額報酬を得ていると、外部専門家は「ちょっと・・・」と考えるはずです(あくまでも上場を目指す会社に関するコメントです)。

上場すると、個人投資家や機関投資家からの投資を募る事になります。

会社の業績向上よりも社長自身の富を優先すると思われるような会社に対しては、株主からソッポを向かれるため、特に証券会社はネガティブな反応を示すことになります。

さらに、Ⅰの部には「役員の報酬等」という項目がありまして、その項目の記載要領には、「提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の内容及び決定方法を記載すること。」とあります。

会社の業績と役員報酬にバランスを欠くような会社の場合、この項目をどのように書けばよいのか、大変困ることになります。

上場を目指す事になれば、社会の公器としての位置づけが強くなる事を理解し、役員報酬の考え方を含め、事業運営の在り方について見つめなおしましょう。

まとめ

あまり市販のIPO本に書かれていないような視点で上場準備開始前に知っておくべき心構えを取り上げさせていただきました。

なお「上場準備を開始するにあたって、最初にやること」につきましては、↓にありますので、ぜひご参考下さい。

「上場準備を開始するにあたって、最初にやること」とは

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