今、IPOのプロセスが変える取組みを行っています。
ざっくり↓で取り上げております。
その流れとして、東証が8月24日に「IPO等に関する見直しの方針について」を公表しました。こちらになります。
内容を見れば、「検討」ということなので、「決定」ではないようです。
主にどのような点について検討をしているのか、主な点を紹介するとともに、考察させていただきます。
ディープテック企業に対する事業性判断に、機関投資家の評価を判断対象に加えます
グロース市場へ上場するためには、高い成長可能性を有する必要があります。
現在、その判断は主幹事証券会社が行っており、東証は、その判断を前提として、上場申請会社の上場審査を行っています。
そこで東証は、いわゆるディープテック企業(素材・宇宙・バイオ・ヘルスケア・エネルギー・ロボティクス)については、その判断を主幹事証券任せにせず、上場申請会社に投資した機関投資家等の評価を判断対象に加えると述べています。
ここでは、主幹事証券の判断をmustとしたままで機関投資家の評価を追加して判断対象にするのか、主幹事証券の判断を除外して機関投資家の評価だけで評価判断できるようにするのかわかりませんが、おそらく後者だと思います。
そうであれば、ディープテック企業やベンチャーキャピタルにとっては追い風ですね。
また、引受証券会社の門戸を拡げるための策の一つかも知れません。
上場日程が柔軟化できるようになります
今のIPOでは、上場承認から上場までのプロセスやスケジュールが硬直化しています。
それを柔軟化出来ないのかという検討です。
東証の公表資料によりますと、図1のようになっています。
(出所:東京証券取引所「IPO等に関する見直しの方針について」より)
図1 IPOプロセス(上場日程の設定等)
この図のとおりになれば、表1のように変更になるようですね。
表1 IPOプロセスの変更概要
現行 | 見直し後 | |
---|---|---|
有価証券届出書提出日 | 上場承認日 | 上場承認日までに |
上場予定日の設定 | 目論見書校了日までに設定 | 上場承認後でも設定が可能に |
想定株価の設定 | 目論見書校了日までに設定 | ブックビルディング終了後までに設定が可能に |
上場申請会社にとって、メリットだらけと思います。
特に上場承認後に上場予定日を変更できるのは、良いですね。
昨年12月24日は、なんと7社もIPOしました。
このような事があれば、市場の関心が散らばってしまい、IPOのメリットが少なくなってしまいます。
このような事を防ぐためにもIPOスケジュールの柔軟化というのは、喜ばしい検討内容だと思います。
しかし一方、スケジュール等がコロコロ変わってしまうと、幹事証券会社側の負荷が増すことが想定されます。
証券事故が起きなければ良いのですが。。。
グロース市場の形式要件の変更を検討してます
現在、グロース市場へ上場するためには、500単位以上、つまり5万株以上の公募を実施する必要があります(プライム市場とスタンダード市場は、そのような規定はありません)。
グロース市場へ上場する会社は、IPOでの資金需要がある会社が上場する市場としてイメージされているため、このような規定がありますが、米国ではユニコーン企業を中心として、あえて公募をせず、ダイレクトリスティングという形式で上場している事例があります。
そこで、東証もグロース市場へ上場する場合も、それが認められるように形式要件を変更することを検討するようです。
内容は古いですが、ダイレクトリスティングにつきましては、↓で紹介しています。
SPAC上場制度を諦めていません
米国の利上げ、また市場の信頼を揺るがすような詐欺銘柄が出て、全般的に爆下げ状態のSPAC銘柄。
ブログの中の人も痛手を負っております。
米国では完全な逆風下にありますが、東証でも導入を引き続き検討しています。
以前の記事ですが、↓で紹介しています。
まとめ
東証が8月24日に公表した「IPO等に関する見直しの方針について」についてざっくりと紹介させていただきました。
重ねて申し上げますが、検討中であり、決定ではございません。
特にスケジュールの柔軟化というのは、ウォッチすべきではないかと思います。
なお上で取り上げた4項目以外にも東証は、検討していますので、東証が公表したパワポ資料をお読みください。
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